（第５話）

　なんか普段の旅行と勝手が違う。代議士のミナサンが通うような高
級割烹のような入口。自分みたいな人間が入っていいの？などと躊躇
する。中に入ってからも、女中さんがカバンを持ってくれるわ、夕食
を部屋のテーブルに並べてくれるわ、布団は敷いてくれるわ、で、思
わずそのサービスぶりに情が移りそうになる。こういう旅の仕方もあっ
たのだなあ、としみじみ思った。＞一人旅　当然出てきた夕食は、美
味が並ぶ。誰にも邪魔されず、美食に舌鼓を打つ。何と素晴らしい時
間の過ごし方。
　食事を終えたら（美味しかったが、両がすごかったので全部平らげ
ることができなかった、残念）疲れと睡眠不足で爆睡。午前１時過ぎ
に目を覚まし、いつものメールチェックをする。密閉した部屋だと携
帯の電波が届かないので、窓際で窓をちょっとだけ開けて受信する。
それにしても、こんなところまで来て１２２通ものメールを読むオイ
ラ（笑、更に最近通いはじめたＢＢＳもダウンロードした）。４時前
に再度就寝、なかなか眠れない。
　ウトウト、としたのも束の間、５時半頃から消防車や救急車やらの
サイレンが外で鳴り響く。近くで火災があったようだ。３ヶ月前にも
高円寺のアパートの３軒先で火事を見ていた人間にとっては、このサ
イレンも他人事ではなかった。
　もう１時間ほど床に着き、６時半、この旅館の温泉に入る。他に誰
も客がいない、と言う独占状態も良かったが、総ヒバの木張りの浴室、
浴槽がスバラシイ！惜しむらくは、しんしんと降る粉雪の中、露天風
呂だったらなあ、と言う想いはあったが、完全木製の浴槽というのは
久しく入っていないので、これはこれで十分感激した。小窓を開けれ
ば外気も入って来る。当然座椅子も桶も全て木製、なんて贅沢なんだ！
更に、温泉の湯上がりに爪を切る。これもほんの小さなことだけど、
幸福感に満ちたときの過ごし方。
　７時半、ちょっと遅れて（寝坊したそうな）女中さんがやってきた。
布団を上げ、朝食を用意する。随分とオレも偉くなったな、と言う感
じ:-)