2) 電気とダンス

　僕はバンドという演奏形態はあまり好きではない。「君はギター、あんたは
ドラムス、僕はボーカル」と言うように、メンバーをそれぞれの役割に閉じこ
めるのはどこか不自由に思えた。かと言って、“弾き語り”ではセンチメンタ
ルなバラードしかできない。そんな僕は自然とどんな音でも一人で作り出せる
シンセサイザーという楽器に魅かれていった。テクノポップと並行して、僕は
Jean-Michel Jarreの驚くべき表現力に驚嘆した。

　ディスコミュージック全盛期にロック／ポップに目覚めたせいだろうか、僕
にとって「ダンサブル」であることは無視できない重要なファクターだ。考え
てみれば、踊れないコンサートやライブと言うのは、何だかアーティストとリ
スナーのコミュニケーションが一方通行のような気がする。もちろん声援を送っ
たり、コブシを振り上げたりすることもコミュニケーションではあるけれど、
僕にはダンスが最も直接的なものではないか、と思われる。そこに音楽の持つ
最も原始的な存在意義が見い出されるような気がする。

　僕は音楽というものが人間の故意で作り出されている以上、楽器がローテク
に属していようとハイテクに属していようと関係ないように思う。ローテクな
楽器の方が情緒的な演奏になる、と言うのもくだらない話だし、ハイテクな楽
器を使うと演奏が安易になる、と言うのも事実無根。そして最も驚くべきこと
は、ローテク楽器では実現できない速いＢＰＭ演奏が、人間のリズム感を超え
るのではなく、むしろ逆に現代人のダンスビートとしてよりフィットしている、
ということだ。ナイトクラビングをいくつか経験してみて、オールナイトで踊
り明かすには過激過ぎるように思えるテクノビートが、実際最も活気あるパー
ティで愛されているのはなぜか。