市役所に着き、参加賞とゼッケンを交換する。今回からはこの
長い伝統を誇る大会も（今でこそ市民ランニング大会は花盛り
だが、戦前からあると言う大会はこの富士登山以外に私は
聞いたことがない）、ランニングチップを靴に装着して計時する
仕掛けになった。準備ができたらトイレに並ぶ（朝早いから、
快便はレースコンディションにとっても大切）。窓から差し込む
日差しが強く、並んでいるだけで汗をかいた。天気に恵まれて
いる、ということは、平地の間は暑さとの戦いになる、と言うこ
とだ。

　そして７時３０分、スタートの号砲が鳴り響く。たくさんの応援
の中、参照に向かって第１歩を踏み出す。予想通り、スタート
直後から暑さのために大量の汗をかく。スターと３分後には、
緩やかとは言え早くも上り坂に入るのだ。こんな暑い日は、こ
の延々と続くゆるやかな上りでの体力消耗も後々のレースにま
で大きく響くのだ。

　しかし、そのことをわかっていながら、どうやらペース配分に
失敗してしまったようである。決して自分では飛ばしたつもりは
ないものの、周囲のペースにあわせるとどうしてもオーバーペー
スに陥りやすい。また、個人的セオリーとして、馬返しまでは
走らないといけない、と言うのがあって、それでスタミナを使い
果たしてしまったようである。水分は給水所である程度は補給
できるが、塩分まで失った分を補給するのは難しい。もちろん
給水所に塩は置いてあるのだが、しょっぱくない程度になめた
ところで焼け石に水である。中野茶屋４６分、馬返し１時間１７
分までは目をつぶれるものの、第３給水所で１時間４５分では、
そもそも五合目関門通過が怪しくなる時間だ。案の定、五合目
通過時刻は２時間３５分、５分のオーバーだった。他の参加者
たちがタイムオーバーでレースを終えているのに対し、私は更
に上を目指した。コースを走る人もまばらになり、意欲も若干
落ちてくるので、かなりつらいものである。

　やはり五合目まで車で来て、そこから山頂を目指すのとは
わけが違う。すでに消耗しきっているので、歩幅の狭さは歴然
としたものがある。それでも私は足を前に進めることを止める気
にはなれない。森の中を走っていた風景が一変し、今度は草木
のあまり生い茂らない、岩肌が露出した中の砂利道を上ってい
く。もうへとへとだ。七合目下の花小屋が見えてくる。しかしそこ
まで持たずに休憩した。薄らとした雲と青い空、眼下には河口
湖をはじめとした山の風景が広がっている。ここは果たして地球
なのか、と思ってしまうような、美しくも現実離れした風景。その
あと、八合目太子館前で再びダウン、結局本八合目富士山ホテ
ルまでたどり着き、下山コースへと入った。時計はすでに１時前
だった。