岡田有希子２４回忌

　今年も４月８日が来た。薄曇りの平凡な１日。昼間は部下も体調不良で休み、
１人静かな何事もない１日。
　職場からの帰りは靖国神社の花見客を横目にあゆの塩焼きを頬張りながら、
市ヶ谷まで夜桜散歩。市ヶ谷から新宿線で曙橋、途中花束を買いながら四ッ谷四
丁目交差点を目指す。
　あの頃と何も変わっていない。２３年前の学生時代も独り者だったし、今もそ
う。成長してない、と言うより、やはりあの時から僕の時計は止まってしまった
のだと思う。就職してからも、バブルの時代も転職は考えたこともなかった。気
持ちは変わっても、運命の転機なんてものには縁がなかったし、こちらも興味を
示さなかった。過去の時間は全て玉手箱の中に。
　毎年こうして花束を持って訪れる習慣の中で、花束には悲しい記憶だけが積み
重なって行く。そこには愛を告白するような輝かしい記憶が立ち入る隙間はな
い。だから、アイドルイベント会場やストリップ劇場に花束を持って行く気がし
ない（花スタンドを出したことはあるけど）。
　サンミュージック前の交差点付近はだいぶ変わった、道路や建物は大きく変
わっている。しかしこのビルはあの時と全く変わっていない。屋上にはクリナッ
クス流し台の赤い看板が２３年前と変わらぬまま。ただ、一階のお弁当屋はラー
メン屋に変わった。
　靖国通りを花束を持って歩いていると、ちょっと気恥ずかしい。しかし２３年
も経っているのだから、あの頃のことを覚えている人は少ないはずだ。
　花束を花壇に置いて、数秒間の黙祷を捧げる。人通りのある中で少し恥ずかし
いが、２３年経っても４月８日の欠かせない習慣。
　今年は曙橋には出ず四ッ谷三丁目に戻り、とみ吉で北海道ラーメンを食べる。
蓬莱湯入浴もパス。帰る途中で季節外れの打ち上げ花火に出会う。国立競技場方
面か？