岡田有希子２３回忌

　いよいよ７月で今の職場（常駐先）を離れ、本社に戻るのか、それとも今の３
人チームを守って７月以降も仕事が続くのか？部門長もチームリーダーも交替し
た４月最初の打合せ。明るく振る舞ってはみたが、どことなく緊張感がある。
　歳をとったこと以上に、あの時代から比べてひどく暗い時代になったと実感す
る。そう、あの時代はバブルの真っ最中だった。しかし今や、接客業の大半は低
賃金のアルバイトばかりだ。あちこちの桜散る花びらが風に舞い、寂しさを一層
募らせる。
　４日にキャンディーズ解散３０周年イベントがあったそうだ。集まったオヤジ
たちが過程や職場でも同じように元気なのかは知らないが、少なくともあの場で
は３０年という長い月日を乗り越えてファン同士の強い絆に盛り上がったと言
う。僕も盛り上がっているわけではないが、こうして今年も四谷３丁目に来た、
これから４丁目に向かう。
　実のところ、ユッコの作品はもう心が痛くて何年も聴いていない。僕は「ユッ
コは永遠だ」なんて言う資格が全くないほど、未だに新しいアイドル探しに夢中
だ。しかし、逆に言えば、ユッコの事件があったからこそ、こんな宛てのない旅
のような人生を送ることになったのかもしれない。ゴールなんていつまで経って
も辿り着けやしない、それでもどこかユッコみたいな誰かを探し続ける旅をやめ
られないのだと思う。さて花を買って４丁目に向かおう。今日はラーメン屋のレ
ポ（めん屋とみ吉のラーメン、脂のたっぷり載った味噌スープとコシのある麺が
絶品）も銭湯のレポも軽めに済ませる。
　スーパーで花を買う、傘を指しながらサンミュージックのビルへ。この時期は
雨が多い、事故後初めてここへ来た時もこんな雨だった、そしてあの時は傘は指
さなかった。
　風が強いので、現場の花壇に花は置けない、ビルの入口にそっと立てかけた。
そそくさと立ち去ろうとすると、ちょうどスタッフと思しき人がやって来て、立
てかけた花を没収していった。傘を閉じ、ビルを見上げる。ビル自体はあの頃と
変わらなかったが、周囲の街の風景は大きく変わっている。
　蓬莱湯で一風呂浴びていく。唐破風と千鳥破風を兼ね備えた風格ある東京銭
湯。この落ち着いた銭湯も、雨降る春の夜には侘しさが募る。入ってみると、カ
ランの湯もぬるい、浴槽の湯も４０度ちょっとあるくらい。銭湯はどこも重油の
値上げで苦しんでいる。このぬるさは燃料高騰のせいか？湯冷めせぬよう、ゆっ
くり暖まっていく。屋号入りオリジナル桶が伝統を感じさせる。壁絵は中島師、
川の水が浴槽に流れ込む構図。静かな銭湯だが、何気に客足は絶えることがな
い。来年のこの日も入浴しているだろうか。曙橋駅に戻って地下鉄新宿線で帰
宅。マジックインキのユニークな広告塔もまだ健在だった。