岡田有希子２１回忌

　今週号のFLASHにユッコの回想記事があった。とうとうあれから２０年も経っ
てしまったか。残念だがボクはあの時から時計が止まっていて、ほとんど成長し
たという感じがしない。だから逆にこうして２０年も前のことを今も昨日のよう
に記憶しているのだろう。今年の４月８日は土曜なので１２時２５分のサンミュ
ージック下の現場に行くことが出来る。
　朝はいつもの土曜日のようにドタバタしながら家を出る。だがＪＲに乗ってし
まえば四谷には１２時１５分前に到着。丸ノ内線を使う必要はなさそうだ。とは
言え、散歩モードで四谷の街を歩いていたらドンドン時間が過ぎてしまう。とり
あえず途中で花屋を見つけられてよかった。と、花屋を出た瞬間、大粒の雨が降
り出した。朝はあの日のように晴れていた、そして四谷駅を降りたときには暗く
曇っていた。そして土砂降り、まるでユッコの涙のように、その時間に向かって
突然降り出した。ボクはそのまま濡れてもかまわない、と最初思ったが、半端な
降り方ではなかった。２０ｍくらい先にコンビニがあったので折り畳み傘を買っ
てしまう。
　現場に着くとかなりの人だかりが出来ていた。いつもの会社帰りの夜遅くでは
ないせいでもあろうが、ちょうど２０周年（２１回忌）、事件の時間の12時25
分少し前である。ボク自身も２０周年に事故時間にいられることをありがたく
思う。現場に先ほど買って来た花束を置き、手を合わせる。その時、その場所を
ただ立ち尽くすように見守る大勢のファンの人たち、手を合わせたら僕もその中
の１人となる。かつて弁当屋だった１階は今はラーメン屋になっているが、「四
谷四丁目　サンミュージック」の看板は今も健在。当時は相沢社長だったが今は
誰が社長なんだろうか。最近はこの事務所、どんなタレントがいるんだろう、酒
井法子（今もドラマでよく見かける、息の長いタレントになったなあ）と安達祐
実くらいしか知らないのだが。現場にいる間、雨は降り続いていた、なので頭の
上を見上げることがやや困難だった。１２時半を過ぎると、黒い人だかりだった
この場所からもぽつりぽつりと人たちが自分の生活へ戻って行く。僕も予定があ
るので行かねば、と言うか、その場に長時間いるのが辛くなって来た。かつては
その場を離れることが辛かったが、今は逆にその場に長い時間立ち尽くすことが
辛い。何と言うか、そんなことをしていても無駄だ、という理性が強くなって来
ているのかもしれない。そんな理性に負けまいと戦うユッコを思う自分の感性が
透明な時間を立ち尽くさせる。

　そして、ほんの数秒黙祷してその場を離れると、雨は止んだ。そして陽が差し
てきた。新宿御苑んお入口から見える桜は満開、僕はそのまま丸ノ内線の駅の地
下にもぐっていった。