１８回忌を迎えて

　２１世紀に入って２年あまりが過ぎた。考えてみれば、あの事件はもう
“歴史”の１ページと言っていい程遠い昔のことになってしまった。当然
の事ながら、１年３６５日のうち、３６３日くらいは彼女のことは忘れて
いる、４月８日と、年末大掃除で部屋片付けをしていたら彼女のＬＰやＣ
Ｄや写真が出てきた時、あるいは本屋やＣＤショップでたまたま彼女の作
品を見かけた時くらいである。しかもこの日は前日からの風邪が治りきっ
ていない、体調が悪ければいつもの場所に詣でることもできなかったかも
しれない。
　と言いながら、８時半頃に仕事を終え、そのまま丸の内線に乗って四谷
三丁目へ。なんと、いつも花を買っていたキリシマフラワーが今日は閉まっ
ている。しかし、その先のスーパー、丸正で花束を売っていたので、そち
らで購入。いまだに女の子に花なんてプレゼントしたことのない不器用な
人間なので、いまだに花束を持って街を歩くのは照れ臭い。雨は止んだが
まだ風が強い。事件当日は快晴だったが、僕が直後に詣でた日は雨だった
ので、荒れた天気の方が当時を思い出す。現場に花束を置き、手を合わせ
ると、そそくさと現場を立ち去った。他に花束は一束だけあった。
　確かに１７年という月日は大変に長い。当時幼稚園生だった人は今は立
派に成人しているくらい昔だ（幼稚園の前を通ったので、そんなことを思っ
た）。だがその一方で、いまだにこうしてこのサンミュージック前に詣で
ているのは、逆に当時から時計の針が止まっているとも言える。もちろん
多くの有希子ファンは結婚して子供がいたりするのだろうが、僕の場合は
結婚はおろか、恋人もいないし、今でもアイドルをとっかえひっかえ追っ
かけている始末（と言うか、本上まなみの結婚以来、また弾みがついてし
まったようで、その後白井夏、高橋マリ子、井上和香、伊藤あいと渡り歩
いてしまっている）。もちろんそんなのは僕個人の責任であって、ユッコ
には何の責任もないわけだが、やはり心理的な成長はあの時から殆ど止まっ
ているし、そもそも成長を拒絶する体質になってしまったように思う。あ
らためて、彼女の存在は普段忘れていても自分のアイデンティティの中に
根を張っているのではないか、と気づく。そのまま近くの銭湯で、これま
た昭和の匂いのままの空間に酔いしれてみた。