2001/4/8(Sun)

　今年の４月８日は快晴だった。まさか、あの頃は２１世紀になっても
こうして自殺現場に花を手向けるために通い続けるなんて思いもしなかっ
た。何しろ、あの事件をきっかけに、僕は人生に希望なんてないことを
悟ったし（少々大げさかもしれないが、少なくとも生きることに猜疑心
を抱き始めたのはこの頃だった）、だからあの時、自分に１５年もの未
来があることなんて信じていなかった。
　でも僕はこうして２００１年４月８日もまた四谷四丁目交差点、サン
ミュージックビルの下にやってきた（サンミュージックってもうこのビ
ルにはいないんだっけ？）。また、僕と同じように今年も参拝にやって
きた人の数も５０は下らない（と思われる）。何と言うか、「みんな強
いな」と思った。日常的には彼女のことなんか忘れているのかもしれな
いが、１５年もの間深い悲しみを心の底に抱えながら、それでも生きて
るなんて、人間って強いな、と思った。１５年もの間、彼女のことを思
い続けているなんて、とっても強いな、と思った。
　空を見上げても、彼女の姿はそこにはない。ただ、雲がゆっくりと流
れている。あの雲がどこへ流れていくかなんて、誰も気に留めちゃいな
いし、誰もそのことを記憶の底にとどめたりはしない。でも僕らは１５
年前に星になった彼女を今も忘れずにいる。そのことが強いな、って思
う。
　よい天気なので、お参りの帰りに新宿御苑に寄ってみた。桜の季節ゆ
え、園内はものすごい人の数、みんなこの世の春を満喫している。２１
世紀も世の中はなんとか平和で、僕らもしっかり生きてます、と言うこ
とを天国の彼女に伝えたいな、と思う。