１９９８年の４月８日は雨だった。詳しいことはあまり覚えていないが、
この日は毎年の雨の確率がかなり高いような気がする。９時過ぎまで麹町
の客先で仕事して、そのまま四谷四丁目まで濡れた都心を歩いてきた。花
冷えのするこの雨は、空が泣いているように思える。三丁目交差点で花を
買い、サンミュージック前に献花、手を合わせる。
　今、恋をしている、恋愛体験は数あるが、今している恋はまるで高校生
の頃のような一途な想いが芽生えている。自分でも驚くくらい沢山の恋愛
詩を書いている、もう詩を書くなんて５年くらいなかったことだから、自
分でも信じられないくらいだ。
　一方で、今年で岡田有希子嬢の１３回忌を今日迎えた。もう、とうの昔
に風化してしまった彼女の自殺だが、こうして今年もこの場所に来た、と
言うのは、手前味噌ながら自分の彼女に対する愛の強さを感じてしまう。
つまり、これは僕が「人を愛する」と言う行為に学んだ貴重な体験であり、
そして大きな自信になっているような気がしているのである。
　告白を伴った恋愛はこれまで２回ある、しかしずっと昔の話。５年くら
い続いた片思いもあった。そうした恋愛体験も時の流れで風化したかのよ
うに思っていた。しかし今の気持ちはあの頃と変わらないくらい高ぶって
いる、あの人にあっただけで顔が真っ赤になり、心臓が飛び出しそうにな
るくらいドキドキしてしまう。
　そういう恋愛が出来るのは、多分ユッコが天国に召されて１２年経った
今でも変わらず応援してきた自分の実績があるからだと思う。過去のアイ
ドルの想い出を引きずるどころか、長く人を愛することの困難に打ち勝っ
てきた自信はむしろプラスだと信じられるようになってきた。今まで仕事
でいろいろあって、不貞腐れた気分になったりして、すごく自分がろくで
なしに思えていたが、今日のユッコの１３回忌で、いますごく自分がピュ
アな人間だと言うことを再認識することが出来たように思う。そんなこと
を教えてくれた天国のユッコに、今日はありがとう、と言いたい。