自分の子ども、あるいはペットを長きに渡って愛することはごくごく一般的だ が（親や飼い主の責任感も手伝って）、野性の生き物（単純に動物好き、とは別 の意味で）を長期間に渡って愛でることはなかなか難しい。自分が面倒を見れる 範疇であれば、その存在を確認することで安心もできよう。しかし、相手の存在 を逐次確認できない状況で愛を貫くのは難しいことだ。一種の固い絆の友情なの かもしれない。 他の猫たちとのライバル関係までも把握、今や人間同士でも隣の家は赤の他 人、と言う時代にあって、町中の猫たちを家族のように愛でる風景。 相手が自由である状態で愛し続けることに本来の愛の意味がある。子どもだっ て成長すれば外の世界へ旅立つ、思い通りにはいかない。相手の自由を尊重しな がら愛でること。風流、粋、と言う言葉以上に、相手を思う気持ちの強さが試さ れる。そんな、当たり前だが難しい話を、シャキッとした冷たいそうめんのよう にスルッと心の中に入ってくる短い物語を見つけた夏のとある日。