Subject: Ibiza(4)
Date: Thu, 11 Mar 1999 01:57:57 +0900

　機内食も食べ終わり、少し落ち着いた。まだまだ飛行時間は長い。
今、日本海を越え、シベリア上空を飛行中だ。川がミルク色をしてい
る。凍っている上に更に雪が積もっているのだろうか。人が住んでい
る気配は殆どない。上から眺めるには美しい風景だが、実際には厳し
い自然だということ。
　この飛行機に乗っている限り、夜は来ない。太陽を追いかけるよう
に飛んでいるからだ。眠りたい時は自分でアイマスクを使って眠らな
ければならないようだ。
　ちょっと疲れたので一眠りした。少し緊張感が和らいで楽になった
ようだ。しかし相変わらず窓の外の景色は雪山が続いている。やはり
世界は広い、モニターは何時の間にか映画上映に変わっている。
　僕の時計は１７時４５分。成田を発ってからおよそ４時間。だがこ
の飛行機の飛行時間のまだ３分の１に過ぎないし、下界も相変わらず
人の住んでいる様子のない厳しいツンドラ地帯だ。こんな遠くまで来
て、この先には一体何があるのだろう？人はいるかもしれないけど、
やっぱり自分たちとは違う人たちだろうと思う。どうも足元にハンカ
チを落としたようだ。しかしこの狭い座席では、かがんで取ることも
ままならない。
　ところで、川がクリーム色なのは、もしかすると雪のせいではない
かもしれない（ただしツンドラに入ってからだが）、それは、泥の色
じゃないか、と言うこと。９０００ｍの上空から見てもかなり広い川
だ。こんな川が大蛇のごとく地上をくねくねと曲がりながら流れてい
る。決して真っ直ぐには流れない。