福岡旅行

　昨年の初の海外単独旅行に続き、今年は日本国内を一通り回ってみたい、
と思った。と言うことで、酒井美紀さんの舞台公演を観に行く、と言う言
い訳はあるにせよ、先月、北は青森まで行ったのに続いて、今度は南は九
州・福岡まで馳せ参じることにした。
　とは言え、今回は会社帰りにせわしなく寝台特急に飛び乗る有り様で、
あまり長距離旅行の実感が湧いていない。でも、青森の時は９時間足らず
の車内だったが、こちらは１５時間も車内と言う長さである。結構ヒマな
んだろうなぁ。でも、ヒマなことって結構大事かもしれない。考える暇も
なく遊びたい衝動で動き回るのもいいが、なんかじっくり考えなければ、
と思うことも多々あるのだ。もっとも、突然ヒマになったからと言っても、
考える脳味噌はすぐには活発にはならないのだけどね。
　今回の旅の楽しみは大きく４つ、再びブルトレ寝台に乗れること（今回
も飛行機じゃなくてかおりんゴメン！）、椎名林檎の故郷「正しい街」見
学、酒井美紀さん舞台公演「東京サンダンス」観劇、そして京都「やしろ
湯」訪問。２日間でこれだけこなすハードなスケジュールである。
　先ずはこの日記も「はやぶさ」のベッドの中で書いているが、たった１
ヶ月足らずのスパンで、子供の頃からずっと憧れていたブルトレ寝台に再
び乗れるなんて、何と言う幸せだろう、と思う。寝台料金がかかるので学
生向きではないのだが、夜行列車と言うのはなんとなく青春の香りがする
旅行の仕方だと思う、揺れる列車の中じゃ熟睡できないしね（笑）。やは
り新幹線や飛行機で、あっという間に目的地に着いてしまう、“急いた”
旅行の仕方は好きではない。それ相応の時間をかけて目的地に辿り着いて
こそ、遠くへ来た、と言う実感が湧くものだし、眠っている間に目的地に
着く、と言うのが、長いトンネルを潜り抜けるのと同様、生活と言う日常
と旅行と言う非日常の境界を明確にしてくれるような気がする。また、青
森行き寝台に乗っているときも思ったが、夜行列車の旅、と言うのは、他
の旅行手段と根本的に違うような気がする。周囲の乗客を見ていても、お
気楽な観光、と言うよりも、何か大きな理由があって（身内の不幸だった
り、出稼ぎからの帰省だったり、etc）実家へ帰る、そんな顔色の人が多い
ような気がする。何度でもしつこく回って来る売り子さんもいなく、安眠
目的のために夜中は車内放送を控える静かな車内は、そうした人たちが心
の中に背負った荷物を抱えながらの旅行に小さな安心感を与えているので
はないか、と思う。一言で言えば、夜行列車での旅行はエンターテインメ
ントやリクリエーションではなく、むしろ人生の旅路。そういう香いを楽
しんでいる僕の方は、リクリエーションなのかもしれないが:-)、何はとも
あれ、流行のテレビドラマを見るより、ジックリと長編小説を読むような
余暇の過ごし方の差のようなものなのである（と言っても、久しく長編小
説なんて読んじゃいないのだが:-)）。
　結局、旅のワクワク感から、車内をウロウロしたり、静岡あたりまでは
車窓の風景をカメラに収めたり、と、観光モードではしゃいでしまい、じっ
くり人生を考えるような過ごし方なんかせず、１１時くらいには寝てしまっ
た、ちょっと風邪気味で風邪薬を飲んだせいか、揺れる車内でもかなり良
く眠れたと思う、十分とは言えないかもしれないが。