高円寺浴場閉店
最終営業日：2000/03/27(Mon)
５０年の長きに渡って営業してきたと言う高円寺浴場も今日が最後。取り
たてて派手なことをするでなし（せいぜい売り物の入浴小道具類が２割引に
なっている程度）、僕の方も、いつものようにパジャマ姿に手桶を抱えてやっ
てきた。
最後の日、と言うことで、閉店後写真を撮らせてもらうご無理をご主人
（奥さんの方）にお願いしてきたので（はなむけに花束を贈っておいた）、
閉店ギリギリに行った、ちょっと遅すぎてご迷惑かな、と言うくらいの時間
（冷汗）。
月曜日は周囲の銭湯が休みのため、いつも混雑しているのだが、今日はむ
しろ空いているくらいだった。この古い銭湯の最期を見届けたい、なんて言
う酔狂は自分を含めて数人だけのようだった。そう言えば、最近の高円寺浴
場は銭湯初心者の利用客が多かったように思う。閉店記念に物見遊山的な利
用が増えて、常連はすでに次の常湯に移動してしまったのだろうか。
本当に何も変わらない、浴槽の湯の温度もいつもと同じ。明日からは他の
銭湯に行かなければならないのが信じられなかった。身体を洗いながら、明
日からどこの銭湯に通おうか、と漠然と考える。そう考えると、ますますこ
の銭湯が自分の落ち着く場所として定着していたかが分かる。壁絵、カラン、
天井、窓、あらゆる風景を瞼に焼き付けたくなる。
湯上がり。帰っていく誰もが店主に丁寧に挨拶して帰る。奥さんと長話を
する人も今日は多い。僕はこの銭湯で最後のソフトラックを飲む。と、奥さ
んが「女湯は終りましたよ」と声をかけて下さったので、ロッカーから使い
捨てカメラを取り出す。
もう一人カメラを持ってきている人がいた。まだ二十代の若い女性だ。自
分も含め、銭湯に執着を持っていたのは意外と若い世代なんだなあ、と思っ
た。もっと背筋の曲がったおじいさんやおばあさんが愛着を持つだろうに、
と思っていたので（注：実際には別の日の昼間にそういう人たちのために取
壊し前に店を開放するのだそうだ）。銭湯好きの女性というのはＭＬ以外で
は初めてだったので、なんか色々しゃべってしまったかもしれない。:-)
最初で最後に入った女湯には、さまざまな発見があった。男湯の方の壁絵
のサインが田沢湖、となっているのに対し、こちらはなんと瀬戸（内海）だっ
た！東北の壁絵の続きが西日本の海だと誰が想像しただろうか？それと、男
湯にはなかった脱衣籠が女湯には高く積まれていたこと。嬉しいことに、閉
店と言うことでこの籠も放出、二百円で１個買い取ってきました。インテリ
アになるかどうかは不明だが、とにかく今僕の部屋には大きな脱衣かごが転
がっている。
女湯、男湯それぞれの壁絵、他に脱衣室のいくつかの風景、例えば高円寺
浴場の名前入りの体重計や料金表、そしてこの銭湯の入口の面構え、などを
撮影していたら、２４枚撮りのフィルムも殆ど使い果たした。僕が最後のシャッ
ターを押して、奥さんは店のシャッターを下ろした。僕は大きな脱衣籠に手
桶を入れてパル商店街を帰っていった。
P.S.翌日は宮下湯へ行った。常湯にするにはまだよそよそしい感じがした。
その宮下湯の帰りに寄ったホープ軒のラーメンも、近日閉店だと聞き、なん
かショック続き。^^;;
<2001.11.23>