（続き）

　上り車道の真ん中あたりからようやく周囲の選手と伯仲するようになった。と
言うかその頃には選手もまばらになり、ドンケツ集団になってしまったことを理
解する。中野茶屋通過５０分前後、予想通りのタイム。馬返し１時間１６分、こ
りゃやっぱり五合目２時間３０分の関門は無理か？とにかくエイドステーション
では足を止めず、飲みながら階段を上る。とにかく、可能性を信じてがんばっ
た。この辺はいい走りをしてたと思う。五合目時間内が無理だと分かったのは四
合目通過ですでに２時間１０分を経過していたことが分かって。２０分前には五
合目入りしていないと関門通過は無理だ。無理と分かるとやはりテンションが落
ち、抜かされる割合も高まる。結局佐藤小屋の関門通過は２時間４１分。もう面
倒くさいからここでやめちゃいたい気分もあったが、浅川さんも上を目指したよ
うだし、５分ほどしっかり休憩したら気力が再度充実して来たので更に上を目指
す。とは言え、暑さとがんばりで消耗した、ペースはムチャクチャ遅い。速い一
般登山者には抜かされてしまうことも。それにしてもこんな遅いランナーにも
「あんパンいかがですか？」、「冷却スプレーどうですか？」と声をかけてくだ
さるボランティアの方の言葉は本当に嬉しい、だけどこちらは逆に遅いことに強
いテレがあるため、つい断ってしまう。遅い、ということは、それだけしんどい
ということでもある。このレースに関してはこのしんどさも楽しみのうちであっ
たが、今年は練習不足などもあってテンション低め、七合目鳥居館で初めて登山
道をそのまま引き返すことにした（これまでは下山道のあるところまで登って下
山道で降りた）。これがまた登山客と沢山すれ違うので照れ臭い。中学生たちが
登ってくる、こちらは試合を途中棄権して降りている、そこへ「がんばってくだ
さい」なんて言われると、相槌こそ返すが、自分の根性なしにものすごく恥ずか
しさを覚える。下山道とぶつかり、他の選手と混じってからも、下をうつむきノ
ロノロ歩いていたので、落ちこぼれオーラが出ていたことだろう。１時半頃よう
やく五合目に戻る。重い荷物を受け取り、レストハウスでトイレとお土産購入を
済ませ、下山バスに乗る。バスの中では軽い頭痛もするし、劣等感もあって不貞
腐れながら寝た（別に不貞腐れなくても下山バスで寝るのはいつものパターンだ
が）。
　市役所到着、そう言えば今年はどうやって小原さんたちと落ち合うのだろう。
途方に暮れながら大きな荷物を抱えウロウロする。うどんのサービスがあったの
で昼食、サービスにしては量がタップリとあり、しっかり腹にたまった。食事中、
宿へのシャトルバスがあるというアナウンスを聞き、上奈に戻ることにした。
いろんなバスがあって訳分からなかったが、最終的に乗ったバスは乗客２人。し
かも１人は浅間神社でさっさと降りたので貸切状態に。それはいいのだが、なん
かヘンなところで降ろされてしまった。いちおう見覚えのある風景だが、方向感
覚が分からない。でもこの大荷物、携帯を持っていたので道を聞く。結局１ｋｍ
も歩くことになった。途中なかなかよさげな日帰り入浴施設「温泉寺」発見、宿
で入浴できなかったら迷わずこっちに来ていただろう。でも上奈に戻ると無事入
浴させていただくことが出来た。結局小原さんたちは宿には戻って来なかった様
子で、そのまま駅まで送っていただいた。駅に着くとすぐに中央高速バスに乗る
ことが出来た。新宿に無事到着、例年だったら「うえ〜、暑っち〜！」って感じ
の東京だが、小田急百貨店の上の電光掲示板の温度表示では２３度とかなり涼し
い（むしろ河口湖の方が蒸し暑かったかも、ちょっと雨降ってたし）。まっすぐ
帰らずにバスターミナル地下のカリオンでアラビアータを食べる。新宿の地下街
にありながら、ちょっとはずれたところにあり静かに食事が出来る、と言うか、
炒め立ての麺が出てくるので気に入っている店だ。そこでレースのことをぼんや
りと振り返ってみる、いや、自分の人生を振り返ってみる。
　今年は調子が出ないと言うか、不調の年ではあった。しかし、なにくそ来年こ
そはがんばるぞ、と熱く燃える歳でもないし、逆にやめちまおうか、と思いかけ
ながらも、おそらく来年も淡々とこのレースに参加するだろう。「がんばってい
きまっしょい」のようなキラキラ輝く青春には及ぶべくもないが、これからも参
加し続ければ感動はどこかにあるはずだ。

大会本部から記録証が送られてきました。

ナンバー６８８
馬返し	1:23:25	2164位／2330人中
五合目	2:41:46	2174位／2023人中
八合目		----位／1155人中
山頂		----位／ 991人中