（続き）

　今夜の宿「上奈」に到着、定宿の刑部旅館が廃業してしまったためにレースの
実行委員会に手配してもらった宿だ。バスで一緒になった梅津さんと河口湖駅か
らタクシー、１５分くらいかな。旅館街の華やいだ場所にあるのかと思ったら、
周囲は真っ暗（苦笑）。荷物を部屋に置いて早速食事、今年もレース前の晩はガ
ッツリ食べます（笑、お代わり３杯）。やはり涼しい気候なので食が進みますが、
しかし慣れた刑部旅館とは勝手が違うなあ。梅津さんが他の参加者とおしゃべり
が弾み、なかなか席を立てなくてイライラ。ウーム、いつもより神経質になって
るかも。女中さんは速くも明日朝のテーブルの準備。学生が合宿で利用するよう
な宿と理解しました。お風呂は温泉ではなかったものの、まぁまぁよい施設で
した。風呂から上がるとすでに部屋は消灯、なのでＰＣメール読みはロビーで、
というかあらかじめロビーのコンセントの位置を調べておいた（笑）。就寝は
１０時半過ぎ、梅津さんは早くも寝息を立てている。すぐに眠れてうらやましい
なあ。やはり慣れない寝床ではすぐに眠れないものだが（その上いつもよりかな
り早い就寝時間だし）、幸い今夜はほどなく眠りに落ちた。
　４時半頃になると外はもう明るく、浅川さんや小原さんがごそごそ動き出す。
５時から食事は今まで通りだが、６時にマイクロバス出発、というのは落ち着か
ない。しかも部屋を完全に空けなければならないので、荷物を全部まとめる必要
がある。ハンガーにかけた背広を鞄に詰めなければならないのはちょっと鬱陶し
い。
　荷物をまとめてバスに乗る。６時出発は山頂コース出場者のみだが、それでも
バスは満員になった。２０分ほどで市役所到着、ゼッケンを受け取り浅川さんと
一緒にシャツに貼る。到着が早過ぎてヒマだ、トイレは宿で済ませたし、快晴な
のでウォームアップしてバテるのもばからしい。とりあえず飲み物でも買って来
て水分補給しておこう。さて貨物車に荷物を預けることに。荷係の人は荷物を放
り投げたりして扱いが粗雑なので、ＰＣを持って来た身としては正直預けたくな
いのだが仕方ない。２つあるのでリュックのベルトでリンクさせる。そして開会
式に臨む。それにしてもさすが日本一の山岳マラソン、どの選手もガタイの立派
な男女たちばかりだ。もう見栄えだけで、エンジニアでオタッキーな性格で手抜
きの練習しかしていない自分は落ちこぼれだと自覚する。するとまた、進学校で
ありながら部活に没頭して勉強しない悦子の姿と自分を重ね合わせてしまう。
　スタート時の応援のユーモアは緊張をほぐしてくれる。だが真剣勝負の他の選
手の緊張と、ただ単に例年と勝手の違う雰囲気に神経質になっているだけの自分
とではほぐれ具合が違うだろう。
　スタート直後から次々と抜かされる。平地のレースなら威勢のいい連中が飛び
出した、という解釈にもなろうが、ここは富士登山競走である、熟練のランナー
たちがそんなことをするわけがない。つまり、最初から実力として他のランナー
から抜かれてしまったのである。快晴の富士吉田市からはクッキリと富士の姿が
見える、でもあのてっぺんには届かないんだろうなあ。