１１時過ぎに佐藤小屋を出る。すでに五合目コースの選手が次々と
ゴールするのを横目に、バス停まで。やはり風は相当の強さだ。寒さ
に耐えるため、歯を強く食いしばりながら歩き、走った。さて荷物置
き場に着いてみると、五合目コース選手の置き場には係員がいるもの
の、山頂コースの置き場には誰もいず、吹きさらしの風で敷いてある
シートがめくりあがり、荷物のタグがなくなっていた。大会の袋に入
れていた私はいくつもある袋から中身を探してみつけなければならな
かった。
　小原さんとは一番手前の店の２回食堂で待ち合わせをしたのだが
（荷物を探している間に会った）、どこにも見当たらず、仕方なくバ
ス停へ向かう。この天候ゆえ、行列は店の中にできていた。バスの中
で運良く梅津さんと一緒になった。市役所まで行き、梅津さんらは完
走賞をメダルと交換。再び刑部旅館へ。登る坂で小原さんとも合流し
た。１時過ぎには旅館に戻った。風呂で汗を流し、大会で配布された
おにぎりを食べた。
　いつもの年なら、こうしてレース後、宿でゆっくりとくつろぐ中で、
今年も夏のメインイベントが終わったなあ、と言う感慨にふけるのだ
が、今年はなんとなく物足りなさを覚えていた。それにはやはり五合
目打ち切りの影響が大きいだろう。今となっては、僕は記録にこだわっ
たりしない。むしろどこまで登れたか、が自分の中で勲章になる。だ
から五合目で終わってしまったことは何にも増して残念なことだった
のだ、と今更ながらに思う。それと、少々やけ気味だったのも反省し
なければならない。やはり心の中でのこの大会に参加することへのプ
ライドが薄れかけているのだろうか。年齢制限を過ぎ、五合目コース
でチャレンジを続ける仲間の先輩方にも少々申し訳ない気持ちだ。
　２時５２分発の富士吉田駅発新宿ターミナル行き高速バスに乗る。
一般参加の外人選手に出くわした。このまま成田に向かうらしい。や
はりこの大会は数あるマラソン大会とは一線を画す、日本一の山を走っ
て登ると言う、誉高きレースなのだ。バスの中、疲れと複雑な気持ち
を抱え、新宿ターミナルまでずっと熟睡した。