科学哲学を問い直せ

　自然科学については素人であるにも関わらず今回の原発事故以降、徹底的にテ
クノロジー（研究室の中に閉じているサイエンスについては素人の出る幕はない
ので対象外）に口出ししてきた。それはもちろん、放射能の危険性についての正
確なデッドラインが不確定のまま「直ちに健康に影響はない」的ないい加減な説
明しかされなかったからだ。
　更に、遺伝子操作の議論でも同じような状況が見られた。遺伝子工学で恩恵を
受ける人は多いので、多少被害者が出ても仕方ない、と考える思考停止した正義
感。つまり、この問題は政府や東電と言う組織による国民をだますプロセスであ
る以上に、その背景に一部の研究者にはびこる無自覚なごう慢さにあるのではな
いか、と言う強い不安。
　政府や東電が悪い、と言うのは犯人が明確で分かりやすい。しかし科学者の中
に無自覚なごう慢さがあると言うのは特定の誰かを吊し上げれば済む問題ではな
いと言うことであり、言ってみれば予報のできる台風より予報のできない地震が
怖いようなものである。
　私は、今こそ科学者の倫理観を問い直すべき時期だと思っている。倫理学者、
哲学者が科学の状況にメスを入れる必要がある。