ホリエモン人気の恐怖

　堀江貴文容疑者の保釈中継は一体なんだったのだろうか。僕にはどう見ても天
下の極悪人を揶揄する視点ではなく、時代の寵児に上り詰めた彼のカリスマ性に
すがり「夢をもう一度」と期待する浅はかなマスコミの目、国民の目でその挙足
を追っているようにしか思えなかった。
　表面的には彼を犯罪者として扱っているようでも、本音としてはまだマスコミ
も国民も彼をヒーロー視しているのではないだろうか。何よりも腹が立つのは、
彼をヒーロー視するという個別の問題ではなく、国民全体がそうした“本音と建
前”と言う二枚舌を使い分けるようになってしまったことだ。その翌日には戸塚
ヨットスクールの戸塚ヒロシも刑期を終えて出所した。なんと彼には支援団体が
いて、その代表がかの石原都知事と言うではないか！今の東京都知事は恥ずかし
げもなく犯罪者を支援する、と言っているのだ。唖然とすると同時に全くもって
末恐ろしい話だと言わざるを得ない。
　繰り返しになるが、靖国問題も憲法改正問題も同様の側面がある。戦死してい
った英霊を祀ることと、A級戦犯を祀るということ（私はA級戦犯合祀を外交問題
とは考えない。彼らが戦争を始めたがために当時の日本人の若者が多数命を落と
したのだから、先ず日本国民に対して謝罪すべきであり、なのに誰も「自分の息
子は天皇に殺された」とは言わずに黙っているのである）の矛盾を小泉首相はい
まだに説明していないし（というか説明など出来っこないのだ）、戦争反対を口
先では唱えていながら自衛隊の行動範囲を拡張しようと唱える。いつから日本人
はこんな風に平気で二枚舌で意見を言うようになったのだろうか。
　「バカの壁」のベストセラーは記憶に新しい。結局、読み手は著者から「お前
はバカだ」と言われたのを容認している、そしておそらく、反省して正しい思考
法を学んでいるようには思えない。その一方で「国家の品格」と言うプロパガン
ダ本の尻馬に乗っている。つまり、最近のベストセラー本に今日の日本人の二枚
舌性が顕著に見て取れる。
　上記の疑問の原因はまだ私には分からないが、こんな裏表のある政治家や日本
国民が提案すること、すなわち憲法改正や教育基本法の改正だが、にはとてもじ
ゃないが首を縦に振れない。３月末まで堀江メール問題で窮地に陥っていた民主
党が代表に小沢一郎を迎えた途端、千葉補選で勝利するまでに挽回したのも、民
主党復活を喜ぶ反面、こんなにも簡単に政治的発言行動（＝投票）をひっくり返
す日本人というのはつくづく信用ならない民族だと思う。ドイツのネオナチはま
だ少数派だが、日本は今や自衛隊を好感する人が８割を越えた。これじゃ戦争謝
罪だって口先だけ、と思われるのは当然だ。国威発揚という形で“愚民の民主主
義”の負のスパイラルに入ってしまっている。これは中韓だけの話ではなく、世
界的なレベルで危険視されてもおかしくないと思う。