自分らしさとは何か

　仕事で悩んでいる今だからこそ、「自分らしさ」と言う問いについて考えてみ
る。
　私たちが普段「自分らしい」と感じるのは、と言う問いに対する回答は、主と
して自分の趣味に没頭している時、家族や恋人と過ごしている時、仕事に熱中し
ている時、などが考えられる。つまり、自らが主体的に何か行動している時の状
態だと考えられる。
　主体的に何かに取り組む様は、別の言い方をすればきわめて主観的な動機によ
る行動に対して「自分らしい」と言う評価が立ち上がると言うこと。
　その一方、就職活動で「自分らしさ」が問われる場面はどうだろうか。企業の
面接担当者はそんな「主観的な」自分らしさになど興味はない。「客観的に」あ
なたらしさを説明してください、となる。ここでは「自分らしさ」とは「自分の
ビジネスパーソンとしての価値」と言うことになる。学校で特に力を入れて勉強
したこと、部活動やボランティア活動に励んできたこと、あるいは取得した資
格、など。
　主観的自分らしさと客観的自分らしさにはかくしてギャップが発生する。一
方、どちらもその人の「アクション」が自分らしさの源泉であるとしたら、その
アクションないしアクションの動機を２つの自分らしさに対して近似しているも
のを探し出すことは可能なはずである。
　ただ、「客観的自分らしさ」は本来、自分で説明できることではないような気
がする。周りの人が判断して初めて「客観的」だと言える。だとすれば、「他人
から褒められ、そのことによってよりいっそう得意になったこと」が客観的に胸
の張れる「自分らしさ」だと言うことができる。
　私は現職場日記の中で「今の職場では全く*自己表現できていない*ことに気づ
く」と言う旨の話を書いた。職場で自己表現、と言うのはいかにも“自分探し世
代”の物の言い方だが、仕事と言うのはよほど生活費稼ぎのためと腹をくくって
いるのでない限り、一生をかけて為す事である以上、やりがいとか自尊心と言う
物と切り離せない。そういう人間の尊厳に関わるポイントで職務の善し悪しを判
断することは決しておかしなことではないと思う。