９条改正は日本自滅のシナリオ

　田中宇氏が彼のメルマガの中で繰り返し「アメリカのイラク
に対する強制民主化はアメリカ自身を弱体化させるものだ」と
述べているように、日本もまた、憲法９条改正を推し進めるこ
とで日本国自身を弱体化させるシナリオが描かれているのでは
ないか、そう言う気がしてきている。おそらく、中国脅威論を
主張する人たちは近視眼的にしか思考していないだろうから、
９条改正による具体的な自滅へのシナリオをはっきり提示した
方が理解しやすいだろう。
　そもそも、昭和の時代に日中戦争、後半には太平洋戦争に輪
が広がったが、を始めたのはなぜであろうか。その背景にはや
はり明治時代の日清戦争、日露戦争での勝利の実績があり、そ
うした実績があるからこそ日本の軍部、ひいては日本国民もイ
ケイケドンドンな調子で世論を盛り上げ、開戦した（と言うか、
クーデターで始まったのだから“開戦”と言う言い方はあまり
妥当ではないのかもしれない）のだと思われる。
　それに対して今の時代はどうであろうか。その太平洋戦争の
結果がいかに惨憺たるものであったかはあえて語る必要もある
まい。前の戦争の悲惨さを忘れている、と言う意味で、ベトナ
ム戦争を反省しないアメリカと今の日本の状況は似ている。
　次に、労働力人口問題を検討する。先ずは少子化だ、少子化
問題の大きなポイントは、高齢者が年金財源を食い潰す一方で、
労働力人口が減るということにある。更に昨今ではニート、フ
リーターなど若者一人一人の労働力としての質の低下も問題視
されている時代である。これに更に戦争に備える、となれば、
少子化問題、フリーター・ニート問題と３拍子揃った労働力低
下を招く。軍事的な力はともかく、経済的な体力は９条改正で
日本は決定的な打撃を受けるであろう。そもそも自衛隊を正規
軍に昇格するなんてことをやったら、徴兵制の復活も視野に入っ
てくる、そうやってどんどん日本の労働力人口が減り、日本は
経済面であっさりと中国に追い抜かれるであろう。そうでなく
とも、戦争を視野に入れた社会なんてのは、リセット指向の現
代の若者にとっては「戦争で社会がメチャメチャになれば学歴
で失敗したオイラにもチャンスが来る」などと言う飛躍した論
理が幅を利かせ、いよいよ労働意欲低下を招くであろう。兵力
で中国に対抗する前に、経済力で中国に負けることになるのは
ほぼ間違いないと考える。
　核兵器の使用も問題だ。アメリカとイラクの戦争は、まだア
メリカと言う国が国際世論を気にする民主主義国家だから核の
利用を免れている。ところが日本が想定している仮想的はどこ
か？中国、北朝鮮と言った非民主主義国家である。彼らを挑発
して戦争になったらどうなるか？特に北朝鮮の場合、正攻法で
日本に勝てるはずがないと分かっているから、不意打ちで核攻
撃をしてくる可能性が高い。あるいは、中東に見られる自爆テ
ロのような都市のど真ん中での攻撃行為が見られるかもしれな
い。このような手段を選ばない戦争を仕掛けられて、軍隊が役
に立つのだろうか。あくまでも、自衛隊の意義は、日本に攻め
てきたらそれ相応の返り討ちがあることを覚悟しなさい、と言
うプレッシャーを与えることにあり、そのプレッシャーを乗り
越えて開戦してしまったら上記のような卑怯なやり方で日本国
土を破壊する戦争となり、きわめて悲惨なものになることは避
けられない。
　軍事力は所詮現代世界では保険になり得ない。前の記事でも
書いた通り、自らパンドラの箱を開ける自殺行為だと考えるべ
きだ。