宮本警部五回忌

　自殺しようとした女性を救うために犠牲となった故・宮本警部の五回忌に東武
東上線ときわ台へ。池袋での丸の内線から東上線への乗り越えは、平日にもかか
わらず混んでいた。
　落ち着きのある東武線沿線らしい静かな住宅街。冬晴れに恵まれ、いっそうこ
の町に住みたい気分になる。駅から南下、手向ける花を買いに行くついでに３年
前に廃業したときわ浴場跡地を覗く。現在は介護老人向けの入浴施設になってい
るみたいだが、一般の人は入れないのだろうか。
　花を買い、駅前交番へ。おまわりさんにことわり、「誠の碑」に花を手向け
る。僕は遠方から来ているので、命日より早く来ている、地元の人はまだ供花は
してないかな、と思いきや、すでにたくさんの花が供えられていた。
　僕は宮本さんを“正義の味方”だと考えている訳ではない。宮本さんは“命の
大切さ”を具現化してくれた人だと思っている。見知らぬ自殺願望の女性でも、
身を呈して救ったことに、自分のような人間でも生きている価値がある、と言う
メッセージを残してくれた人だ。今、人生でも最も辛い時期の１つを生きてい
る。あらためて宮本さんが残してくれたメッセージを噛みしめ、ときわ台を離れ
た。