昭和ブームとはなにか

　銭湯ヲタクをやっていると、昭和レトロブームからこの世界に入ってきた人が
多いことに気づく。自分はレトロにはそれほど興味はなく、逆に昭和レトロブー
ムって一体何だ？と客観的にその実体を知りたくなる。
　歴史自体のブームも最近あって、歴女なんてタームも流行っているが、さすが
に戦国時代のアイコンは博物館や歴史小説などの中にしかない。しかし昭和のア
イコンはまだ世の中の一部に残っているので、リアルな懐古主義を体験すること
が出来る。
　懐古主義で重要なのは「現代社会に失われた何か」である。それが何か、と言
うことを考えた場合、私は「自分探しではない幸福のあり方」だと答えてみた
い。
　競争社会に疲れ、癒しを求めた、と言う言説は、ちょっと的を外しているよう
に感じる。昭和の激動の時代の方がよっぽど競争意識は高かったはず。高度経済
成長は世界との競争の賜物だったはずだ。
　むしろ私たちが疲れているのは、消費社会で人と人とが分裂させられたことに
ある。核家族化や自分探し疲れにそうしたものを感じる。レトロな建物や装飾品
は、私たちが家族としてまとまっていた時代のアイコンである。それは戦国時代
ヲタクとは異なる指向（戦国時代ヲタクはむしろその中で生きるヒーローたちの
生命力への憧れのように感じられる）に思われる。