「日本の誇り」を疑う

　書店で社会思想系のコーナーに行くと、必ず「日本の誇りを取り戻せ！」的ス
ローガンがタスキにかかった類いの本が山積みにされている。正直、今さらこの
手の煽りは辟易を通り越して退屈ですらあるのだが、あらためてこの手の言説に
軽く意義を唱える。
　異議提出の最大の根拠は、日本の文化にある。日本の文化は基本的に日本独自
の文化の底辺に必ずと言って良いほど輸入文化がある。そしてその輸入文化の代
表は、彼ら（ナンチャッテ）ナショナリストの皆さんがお嫌いな中国文化であ
る。かな文化、漢字文化がそうだし、仏教他の宗教文化も同様。
　「日本の誇り」を声高に叫ぶ人たちの多くがこのことを忘れているように思え
る。中国や朝鮮半島との対立は日本の長い歴史の中でもごく最近の出来事に過ぎ
ない。
　むしろまっとうな右翼の人たちは「日本の誇り」なんてとってつけたような主
義主張を持ち出さない、「アジアの誇り」と言う言説を用いているはずだ（いわ
ゆる「大東亜共栄圏」。歴史的経緯を考えると、これも安易には賛同できない
が、少なくとも安っぽい「日本の誇り」よりはまともな議論だと思っている）。
　結論、「日本の誇り」と言う言説はマスコミないし政府の煽りに過ぎない。私
たちの正しい「誇り」の根拠は、あるいはアジアであったり、あるいはもう少し
民族的（と言っても、「日本民族」なんてものを仮定するのは難しいだろうが）
なものであるべき。