アナキズムとは「政府転覆」と言う大胆なプロセスは通るが、その本質は「大 衆の判断を完全に信用する性善説の局地」である。政府そのものが要らない、と 言っているのであるから、大衆は間違ったことをしない、と言う過激な性善説を 取る。 その意味で理想的に過ぎ、現実的でないのは当然である。しかし、人々が暮ら しやすい世の中は制度や法律（権力）、あるいは警察や軍隊による制止（暴力） などによる「統治」では限界がある、本質的に私たちが隣人を信用出来る世の中 にならないと本当の理想社会は実現出来ない、と言う思いがある。 すなわち、アナキストが議論すべきは、政治制度の改革ではない。ひたすら、 大衆をいかに相互に信頼しえる関係に導けばよいか、と言うものになる。これは もはや、政治家ではなく、倫理主義者、もしくは宗教家の仕事である。私が核廃 絶であるとか、死刑廃止論とか言った主張を唱えるのは、全ては国家間、大衆間 の相互信頼を目指すことを表出させた主張なのである。