[書評] 写真集「若き日本人の肖像」吉永マサユキ

　明日のJASPM例会と外山恒一オフ会の両方で話のネタになりそうな写真集を購
入。
　吉永マサユキと言う写真家は、ファンとは言えないが以前から気になる存在で
あった。数年前、BURSTと言うトンでも雑誌（出版社はあのヲタク系ゴシップ誌
ブブカと同じ）があり、マリファナ話、ＢＭ（Body Modification、身体改造、
つまりピアッシングやタトゥーを超えた肉体装飾で、もはやサイボーグの領域）
ネタ、そして彼が得意とする被写体である暴走族などの特集。正直、この雑誌で
僕はかなり世界観が変わった。そんなことはまた機会を改めることとして、その
BURSTに連載されていた吉永氏の強烈な集合写真は無視できない迫力があった。
　ここにあるのは全て集合写真である。それもかなりトンガった人たち。かなり
いかついので、生で彼らに出会ったらすごい迫力だろう（もちろん、この写真で
もその迫力は伝わっているが）。僕がこの写真集で感じるのは、「人は１人では
生きていけない、群れることで、仲間がいることで生きていける」と言うこと。
普段観る写真集と言えば、特定の芸能人、スポーツ選手、アーティストなどが被
写体な訳だが、そう言ったほんの一握りのオーラをまとった人たちでなく、群れ
ることでオーラをつかむ平凡な人々が被写体として輝く。もしかすると、こちら
の方が私たちにとって「リアル」なのではないだろうか。ただ、集団なだけに、
群れていない時のひ弱な存在感もまた見え隠れするところが人間臭い。
　別記事で、私は「ヤンキーとは群れることそのもの」だと書いた。ヤンキーと
は日本語に直せば「派閥」なのだ。トンガッタ人たちの不良性の裏に、リアルな
政治性を感じる。実は、自分探しだとか、自分らしさだとか、個性だとか、そん
なものがもてはやされる今の時代と言うのは、こうした底辺でしぶとく生きる人
たちの「群れる」特性を解体し、彼らの政治力を骨抜きにするための狡猾なプロ
パガンダだと言うことが分かる。
　今の時代に不満を持つのなら、ヤンキーになれ。つまり、胡散臭い「個を大切
にする」時代に惑わされるな、群れることで、集団として現実社会に対して自己
主張せよ、と言うのがこの写真集のメッセージではないだろうか。