今年も東京大空襲の３月１０日に都慰霊堂へ。靖国に祀られた英霊の方々は毎 年政治的談義に巻き込まれ、静かに眠れない不幸の一方、空襲の犠牲者はそのよ うなこともなく、静かに眠っておられる。だが私には空襲の犠牲者こそ今の時代 に政治的意味を見い出す。空襲は一般市民が犠牲になる惨事であり、ついこの間 もバレスチナの空を襲った、極めて現代的な問題でもある。 ＪＲ両国から徒歩10分くらい、横網公園内にある慰霊堂は灯りがあまりない。 昼間は式典があってもっとにぎやかだったはずだが、夜はたまに地元の人が散歩 で通りかかる程度で寂しい。いや寂しいと言うより、暗闇に浮かぶ慰霊堂の巨大 な唐破風ファサードは不気味ですらある。硬貨を賽銭箱に投げる。反戦の祈りは 今や遠い昔を懐古することではなく、すぐ明日の平和への祈りだ。帰りは大江戸 線で。