中村うさぎｖｓ雨宮処凛

http://blogs.yomiuri.co.jp/book/2008/06/post_4d2c.html

　記事そのものは雨宮氏のプレカリアート闘争の著書を紹介するものだが、実質
的に新左翼（雨宮氏）に対する新自由主義者（中村氏）からの思想批判の体をな
している。
　しかし個人的には、中村氏の方が今日の社会認識に乏しい、という感覚しか受
けない。読売の書評欄だからして、新左翼をやんわりと叩くような記事にした
かったのかもしれないが。そもそも雨宮氏が子供の頃アトピーに悩まされ、自分
ではどうしようもない病苦や差別の苦しみを乗り越えて来たことを知っていた
ら、中村氏の「自己責任」と言う言葉がいかに安易かはすぐにわかる（中村氏自
身が健康に恵まれ、能力に恵まれているからこそ、自己責任でライターという仕
事が出来るのだ。そうでない人間に自己責任論を安易に押付けるのはいかがなも
のかと思う）。また、無責任なニートの若者を槍玉に挙げるような例を挙げる展
開はどうにもイヤラシさを感じてしまった。
　「責任」と言う言葉は人が社会に出て行く上で必須のたしなみだ。しかし「自
己責任」はそうではない。責任とは自分が他者と交わる際に、自分が世話になる
ことの返礼として何かを返すことである。それはまさに社会の、社会人の基本
だ。しかし自己責任というのは、自由を選び取った際に引き受けなければならな
い責任、という意味で単なる責任よりも特殊なものだ。大体、建築偽装や食品偽
装と言った、組織的な犯罪を考える場合、容疑者がそもそも自分の役割を“選び
取った”と言う事実を放棄してしまうので、自己責任という概念での追求が無効
化してしまうことになる。そのあたりのことは先日紹介した内田樹氏の著書を読
んでもらえば一発で分かる。つまり中村氏は先ず内田氏の著書などから勉強して
もらいたいところだ。