死刑は負け犬の勲章か？

　茨城での連続通り魔に続き、今度はなんと自衛官が鹿児島で事
件を起こし、「死刑になりたかった」と言う自供内容がニュース
になった。私が感じるに、現在の格差社会で更生の道を閉ざされ
た人々にとって、もはや死刑は犯罪の抑止力としては効果が薄く、
それどころか死を迎えるにあたっての“最後の勲章”の意味合い
すら持ち始めたのではないか、と感じる。
　これは犯罪学的な見地と言うより、悪魔信仰的オカルト主義、
ネオナチのような悪のヒーロー志向に近い昔からある素朴な不
道徳な邪悪信仰の延長かもしれない。ただ、20世紀最後のオ
カルトだったオウムはほぼなりを潜めたし（一部地域ではまだ
あるのだろうか）、ネット右翼たちによる南京大虐殺の否定議
論もまだ「東条英機万歳」的な象徴化には至っていない。だが、
こうした凶悪犯人は確かにこうしたアンチ志向の最先端を走っ
ており、そのうちこのような思想は広がりを見せていくことに
なるかもしれない。極刑に甘んじるのは、それこそキリストが
十字架にかけられたように、一方で「殉教」として崇められる
考え方がある。特に今のような激しい混沌の時代にはなおさら。
こうした「殉教」志向の若者たちを押さえ込む上でも、死刑判
決の無闇矢鱈な連発はやめるべきではないだろうか。