死刑廃止私論

ミクシィの死刑廃止コミュで持論を語りあうトピが立っていたので、それ向けに
持論をまとめてみました。

　私が死刑廃止を唱える理由は、もちろん被告の人権や国家が国民を殺すことを
正当化することに対する嫌悪、と言うのもありますが、凶悪犯罪と言うやや非日
常的な問題を身近な問題として引きつけた場合、“死刑制度賛成”という思想そ
のものが、今日の格差問題や戦争への歩み寄りの思想的源泉になっているのでは
ないか，と考えるからです。
　死刑とはすなわち、犯罪者に対して更生を期待しない、このまま社会から退場
してもらう、という考え方です。私にとっては、刑務所というのは犯罪者が社会
に戻るまでに更生するための施設だと思っています。そして、犯罪者の更生を期
待しない、と言う非民主的な発想は教育制度に直接影響するでしょう。すなわち
教育放棄の正当化に直結します。教育格差は更に生活格差に直結します。死刑制
度の存置はすなわち、２１世紀の現代に不平等、不公平を容認する、格差問題の
根源的な問題であると考えています。
　また、死刑のような極刑の存在は、社会を閉じた集合として立ち現れることを
容認します。つまり社会の内側の人、外側の人、という概念。凶悪犯罪者と言う
“外側の人”は社会から排除、抹殺してよいのだ、という意識を国民に植え付け
ます。その結果として様々な差別が表に現れています。今日の社会にはびこる偏
狭なナショナリズムはその表れだと思っています。民主主義社会でのこうした偏
狭なナショナリズムの流行は、まさに２０世紀にナチズム、ファシズムで経験し
た通りの道程を歩むことになると思われます。凶悪犯罪者を殺すことを肯定する
ところから始まって、いずれ他民族殺害の肯定、すなわち戦争への道を進む危険
性をはらんでいます。つまり、大げさな話ではなく、人類没落の小さな芽である
死刑制度を摘み取る、と言うことが、長い目で見た場合人類繁栄にとって非常に
重要なことではないか，と考える次第です。