なぜ民主主義を支持するか

　一般的にはもちろん民主主義は誰もが当り前のように支持する政治思想だが、
外山氏のような人の周辺で議論していると、民主主義反対の議論も沢山聞こえて
くる。そうした中で、もう一度民主主義を支持すべきかどうか、考え直してみ
る。
　先ず民主主義否定の根拠は何か。いわゆる議会制民主主義は「多数派の独裁」
であるからである。少数派の人間にとっては、国家元首や少数の政治的強者（貴
族かもしれないし軍部かもしれない）の独裁でも“多数派”民衆の独裁でも自分
たちの意見が通らないことに変わりはないのだから、これは至極当然の考え方で
ある。
　一方私はと言えば、もちろん社会思想的には間違いなく“少数派”だが、別に
単なる多数決の問題として民主主義を考えているつもりはない。むしろ“社会的
弱者”を政治がどう扱うか、と言うことに関心が強い。社会的弱者を救済しよう
とする政治思想、と言う意味では、“アカ”の別称で虐げられている社会主義、
共産主義の方がすぐれていると思うし、あるいは前述の国家元首の独裁国家の方
が民衆の暮しが豊かだったりする場合がある（だいぶ前に中央アジアの生活を探
訪するドキュメントがあって、確かに情報は遅れているのだが生活はかなり豊か
であることに驚かされたりした）。つまり、民主主義が万能だとはさらさら思わ
ないが、否定されなければならないほど悪いものとも思わない。
　問題にすべきは、社会主義国家の実現が非常にむずかしい（国家の構成員全て
が社会主義思想を理解していなければならない、という前提が最後まで出来な
かった）のと同様、民主主義も国民全体に思想を行き渡らせないといい結果を生
まない、ということでしかない（ここで外山氏はファシズムを国民全体が知識を
持つ必要がない点で現実的である、と主張しているが、ここでは深堀しないこと
にする、今後いつか深堀しなければならなくなるだろう）。私が常日頃からマス
コミ批判を繰り返しているのは、別に単なる憂さ晴らしでやっているわけではな
くて（笑）、報道機関の存在は民主主義にとって不可欠でかつ重要だから批判を
繰り返しているのである。今日、民主主義と資本主義と新自由主義の三本柱が民
衆の生活を苦しめていると言われるが、民主主義を批判する人は多くても、資本
主義を批判否定する人は少ない（新自由主義はもちろん１０人中９人は批判して
いる）。実のところ、民主主義はおそらくクーデターを起こせば簡単にひっくり
返せる。一方資本主義は革命ではいかんとも代え難いほど今日の地球上の生活を
支配し尽くしている。その意味で、民主主義批判としてでなく、資本主義批判と
しての外山氏の思想は期待するに値するものがあると考えている。