死刑論議

　毎日新聞で、日本国民の９割が死刑賛成、と言うアンケート結果を報道し
ていた。死刑廃止論者としては絶望的なほど残念としか言い様がない。

　今回の論点は２つ。先ず第１点、賛成論はたいてい「殺人犯には命をもって償
うべき」と言う論調が多い。殺人が起こった、という事実にのみ立脚した底の浅
い議論だ。犯人には殺人を犯すまでののっぴきならない理由があるはずで、それ
を解決しなければ凶悪犯罪は減らないと思う。つまり、そうした因果論を考えな
いことには、殺人事件だけでなく自殺も減らない。今日ますます増える自殺問題
について考える時、殺人を犯すような社会不適格者は死刑にしてよろしい、と言
う議論の影響として、追い込まれた人々の逃げ道をふさいで自殺を増やしかねな
いように思う。私は「死刑存続は文明国として恥ずかしいことだから」と言う
ヨーロッパ追随型の死刑廃止論も底が浅いものだ、とは思っているが、少なくと
も凶悪犯罪の問題の根源を突き止めようとする態度で議論することが“文明国”
なのだ、と言うならば、前述の議論はしかるべき根拠のある理由であろう。

　第２点、これはかなりヤバい議論になるが、これまでの歴史を振り返って最も
ひどい殺人犯を問われれば誰になるか？ズバリ、昭和天皇であろう。昭和戦争開
戦を決めたことによって、相手国ばかりでなく自国にも多大の犠牲者を強いた。
このような戦犯が正しく裁かれず、結果的に歴史上もっと長期間在位した天皇と
なった。もし死刑を存続するのであれば、この問題を差し置くことはできないは
ずだ。死刑存続を主張するとはこの矛盾についてもちゃんと説明して欲しいもの
である。