文明の衝突

　フランス暴動やムハンマド風刺漫画暴動について、単純にサ
ミュエル・ハンティントン的「文明の衝突」に還元して考える
べきではない、と言う議論を以前行ったが、日本はどうやらこ
れからこれに類する事件が多発しそうな気配だ。ただし、日本
ではアメリカ的なポスト冷戦の仮想敵としてではなく、フラン
ス的な不況などの失政に対するスケープゴート＝人種差別とし
て立ち現れるだろう。
　滋賀での幼児２人殺害の犯人として、日本人と結婚して中国
から移住してきた女性が逮捕された。その前にも広島では幼児
殺害の犯人が在日ペルー人だった。このところどういうわけか
幼児殺害の事件が急激に増えているようだが（私にはこちらの
方面の分析はちょっと知識的にも関心的にもできないので、他
の方の研究に譲る）、多くの犯人は日本人ながら、その中に在
日外国人が犯人に上がってきている点は大いに議論を呼んでい
る。
　日本の通常の社会状況で露骨な人種差別が近々に発生するこ
とはないであろう。そうした問題が顕在化するのはやはりもっ
と大きな事件が発生した場合である。すなわち天災、人災によ
る大規模な災害発生時である。関東大震災のときも、あらぬ噂
が在日朝鮮人への不当な差別を助長したと言う。人種差別はあ
らゆる意味で問題の解決にならないどころか、余計な社会問題
を引き起こす。彼らのせいで雇用が減っているわけではないし、
彼らのせいで災害の被害者、犠牲者が増えるわけでもない。
彼らが暴徒化するとするなら、そもそも彼らを暴動に追い込む
原因が社会にあったから、と考えその対策を検討した方がたい
ていは建設的な議論になる。まだ冷静に議論できる今のうちに
こうした議論を行い、差別の芽を摘み取っておかなければいけ
ないだろう。