スケープゴートの問題

　プロパガンダの問題と背中合せなのが「スケープゴート」である。プロパガン
ダが人々を誤った判断へと導く手法であるなら、その誤った判断の矛先が必要に
なる。
　フランス暴動ではサルコジ外相によって「郊外の移民」がスケープゴート、す
なわち事件の犯人であると決めつられけた。そもそもこの事件で、なぜフランス
国民はサルコジ外相のプロパガンダにだまされたのか？フランスのみならず、今
のヨーロッパは日本とは比べ物にならないほど失業率が高い。特に「郊外の移
民」は４０％〜５０％の高い失業率があると言う。それだけ仕事からあぶれてい
れば、そう言う人たちが車に火をつけたに違いない、という短絡的発想も容易に
行なわれる。そしてなによりも、フランス白人が就職できないことを、政府の失
策として矛先を政府に向かないよう、巧妙な弁舌によって彼は移民にその責任を
押し付けたのである（曰く、彼ら移民たちが安すぎる賃金で仕事をするから俺た
ちが職にありつけないんだ、と）。新自由主義は労働者、あるいは雇用からあぶ
れた者同士の連帯を引き裂き、このような分裂傾向を巧妙に演出する。この罠に
はまってしまっては私たちはいつまで経っても私たちの主張が「声なき声」とし
て闇に葬られてしまう。
　誤った発想で監視カメラを容認してはいけない、誤った発想で自衛隊の軍隊昇
格を許してはいけない、誤った発想で憲法９条を変えさせてはいけない。全ては
我々が何が正しいかをちょっと立ち止まって考えることから始まるのだ。