英会話系の語学番組は、一般向けには日常生活の場面、ビジネス系であれば商 談で自らの商品の優れている点の説明であったりと、常にポジティブな内容を描 く中、ロシア文学を扱ったロシア語講座上級編は全く正反対のアプローチで、ノ イローゼ直前の深い悲しみが切々と語られるドラマになっている。 しかし考えてみれば、今やコロナと戦う医療現場で、家族や家を失って途方に くれる九州の皆さんの悲しみとの連続性を考えると、英会話講座のポジティブさ は私にはものすごく不自然で、難解なりにロシア文学の深い悲しみこそ、今の時 代に深く噛み締めなければならない内容に思われ、ステイホームの中で講座の放 送視聴は貴重な時間となっている。 ある意味、今日のテレビやYouTubeで見られるエンタメのポジティブさは、悲し みを癒やすには良いと思うが、医療現場や被災現場にはいなくて、ステイホーム している私のような人間が現場の深い悲しみに思いを寄せる訓練として、このロ シア文学の深い悲しみをしたためた文章を味わう時間はとても大事だと思う。