愛の裏返しもまた愛でなければならない

　死刑制度の話で、多くの人が死刑精度を支持し、自分は反対である、と言う主
張。大衆が各々の「愛する」人を殺されたことへの「憎しみ」を根拠にしている
訳だが、私の議論は憎しみの否定ではなく、そもそも司法に犯罪者を殺す権利は
ない、と言う論法を立てた。しかしよく考えると、私の主張も司法への「憎しみ」
を根拠にしているのであり、それでは同じ針のむしろのような気がしてきた。
　キリスト教の「右の頬をぶたれたら、左の頬も差し出せ」と言うフレーズは有
名だが、イスラム教の「目には目を、歯には歯を」もまた、本来は復讐と言うネ
ガティブな憎しみを元にしているのではなく、苦しみや悲しみを犯人とシェアし
ようと言う「愛」を根拠にしている(日本語訳に問題あり)。
　つまり、「憎しみ」と言うネガティブな感情を根拠に犯罪者を裁くのではなく、
痛み苦しみを被害者と加害者がシェアすべき、と言う発想にしたら、この議論は
大きく方向を変えることができるのではないか。憎しみの感情をベースにしたら、
負の連鎖になることくらい、普通の大人なら分かるはずだ。問題は、殺人などの
苦しみ悲しみをシェアする方法論に変えなければならない。