家庭教育と歴史認識

　大層なタイトルを付けてしまったが、別に答えを持って書き始めたものではな
い。むしろ書けば書くほど混沌は増していくばかりかもしれない。
　先ず家庭教育、児童虐待問題やら、給食費滞納問題やら。思うにこれらは、親
が親として失格、と言う以前に、人間として失格である、ということ。児童虐待
などは、２０年くらい前からあった、ペット虐待問題（飼っていたペットを簡単
に捨ててしまう問題）が盛り上がっていた頃にちゃんと議論をすべきだった。そ
れをしなかったために、今では犬猫どころか自分のお腹を痛めた子に対してさえ
（まぁ大半は義父や義母による虐待だが、時々実母による虐待もあるから驚き
だ）非人間的な扱いをするようになった。その虐待という最底辺の上に、半ば予
備軍とでも言うべき給食費滞納組の親たちがいる。分かりやすく言えば、これは
親の世代の格差だ。一方では幼稚園や学校の運動会などの場で高いビデオカメラ
を回す親がごく普通の光景となり、“お受験”の加熱っぷりも少子化時代を迎え
て我々共通一次世代以上にますます白熱している。他方で前述のような子供に対
するネグレクト。もはや収入格差云々で格差社会を語っている場合ではない、親
の世代の“子育て意識”の格差はもうすでに固定化してしまったのだ。
　日本には当分、良き民主主義を支える「マルチチュード」が現れることはない
だろう、とあらためて思わされる。上記のような状況は、多様な意見から最適な
買いを見つけ出す「多様性民主主義」ではなく、上下に二極化した回想が対立し
たままいつまで経っても並行線をたどる「二極性民主主義」なのだと思う。そう
考えると、いつの間にか多党制から自民、民主の２大政党制に移ったのは必然な
のかもしれない。
　二極性民主主義の下では、国民は薄っぺらな議論しかできない。簡単にマスコ
ミに煽動され、日和見的に世論が動いていく。かつてのナチスのようなプロパガ
ンダに満ちた政治的宣伝が行なわれる。現行憲法は６０年以上経ったからそろそ
ろ改憲すべきだって？冗談じゃない、世界史上最も優れた憲法と言われたワイ
マール憲法が改正されたあとに登場したのがヒトラー政権だったことを考えた
ら、今の平和憲法の改正は世界戦争への序章と考えるくらい強く警戒すべきだ。
それが歴史に学ぶということだ。そんな当り前のことを誰も言わない、この状況
をどうしたらよいのだろうか。現在の株価暴落が長引けば、拝金主義者にはいい
お灸になるだろう、と妄想する一方、現実には経済的混乱はますます国民の偏向
ナショナリズムを煽り、戦争へ一直線ということになりかねない危険性が高い。
北朝鮮問題も解決が進まずナイーブな問題だが、私にはこの内政問題が一番ナ
イーブに思える。