相模原事件容疑者、ドゥテルテ大統領、戦地に行く前に死んだ人の数


<2016/Oct/13(Thu)>
 相模原の障害者殺傷事件はまごうことなき犯罪だが、同じ大量殺人でも、フィ
リピンのドゥテルテ大統領の場合、国内の麻薬犯罪撲滅の視点からフィリピン国
民の支持を得ている。
 前回も話したが、容疑者が衆議院議長に手紙で訴えたことからも分かる通り、
彼の中の論理では障害者を殺すことに正当性を担保しようとするものがある。単
なるイカれた男の犯罪などと簡単に断じてはならない。
 死刑問題はこの落とし穴と同じ理屈だ。確かに日本人にはドゥテルテ大統領を
支持する人も一定数いるようだが、もし彼の行為が許されるのなら、果たして相
模原事件の容疑者を犯罪だとする説明の根拠は崩れないか?麻薬犯罪者を殺して
良い、と言う稚拙な正義が通るようなら、重度障害者は非生産的な存在だから殺
して良い、と言う暴論に抵抗し切れない。こういう哲学的な問題をはらんだ事件
が、オリンピックや芸能ニュースの陰で忘れ去られるようであってはならない。
 大量殺人で気になることが1つ。よく太平洋戦争で南京大虐殺など他国に合わ
せた犠牲は外交問題でもあるため繰り返し議論されるが、そもそも日本人が全体
でどのくらい犠牲になったのか。広島長崎の原爆や東京大空襲の犠牲者数は概数
ながら知られているが、他にも日本国中の都市が空襲にあっており、総数が論じ
られる場面は極めて少ない。また、徴兵された兵士の殉死者数はどうなっている
のか。単純に靖国神社に祀られた人数だけでは分からない。日清、日露の殉死者
は容易に分けられようが、訓練中に亡くなられた若者も多いと聞く。そういう人
たちは殉死と見なされているのか。もしかして、そういう“お国のために務めを
果たせなかった”人々を軽く扱っているとすれば、間接的に戦争を美化している
ことになろう。
 とにかく、殺して良いが悪いか、と言う議論は非常にうつろい易いものである。
私としては、そもそもが「殺して良い人などいない」とすべき考えである。でな
いと、そのような線引きはジャッジした人の私意性から免れない。人工中絶も同
様に罪であると考える。