シニアオリンピックの提案

　ミクシィで死刑廃止ニュースが盛り上がっている。死刑廃止はプロフィールに
も書いているくらい自分にとって重要なテーマではあるものの、ここ最近、目新
しい視点が提供できる訳でもないので、スルーしている。そんな中、今月の現代
思想のテーマが「相模原障害者殺傷事件」。ここでもう１つの私のテーマ、「オ
リンピック反対」と死刑廃止をつなぐ知見を得られたので、展開してみる。

・若さを誉め称えるだけでは片手落ちの時代
　先ず興味深かったのが上野千鶴子氏の記事。「高齢者が自分の身体に障害が生
じた場合にそれを素直に受け入れられないのは、本人がそれまで障害者差別をし
ていて、いざ自分が障害者になった時に耐えられないからだ」と言う視点。やは
りフェミニズムの人は障害者問題でも面白い知見を提示してくれる。
　つまり、高齢化社会は社会的弱者が大量に出現する時代、歳を取れば誰でも社
会的弱者になる。この前提が共有されなければならない。オリンピックは強者が
讃えられる場である。しかしそのような弱肉強食の思想は、社会的弱者だらけに
なる近未来に社会全体が耐えられなくなるだろう。社会的弱者の居場所を拡大し
なければならない。そのためには、もはや施設をいくら作っても追いつくもので
はないし、そもそも施設に閉じ込めて社会から切り離すやり方は、障害者であれ
高齢者であれ、社会が受け入れを拒否しているので差別である、と言う発想は耳
が痛い。そのために私はオリンピック廃止を主張しているが、いきなりそこへの
ハードランディングが無理なら、パラリンピック同様、シニアのためのオリンピッ
クを開催すべきだと考える。

・「役立たず」を否定する思想は、犯人の思想をかえって強化する
　優生思想とは微妙に異なるが、「役立たずの障害者は殺してもかまわない」と
言う犯人の考え方を肯定する人はネットを見る限り一定数いる。また、そうした
思想の誤りをきちんと説明できる人は極めて少ない。だいたい、衆議院議長に手
紙まで送ったと言う犯人の行動からして、気がふれた人間の衝動から発生した事
件ではなく、確固とした思想的自信をもって遂行された。
　世の中には光の当たらない人がたくさんいる。その大半が光の当たる場所を目
指している（そのことが現代社会では善とされる）が、そもそも目指していない
人もいる（現代社会では悪に分類される）。そして、後者は前者の中から苦労が
報われない過程で次々に後者に降りてくる。社会的弱者多数の時代（高齢者に限
らず、すでに格差社会でこの現象は現実化している）には後者がたくさん出現す
る。そういう人たちは皆否定されてしまうのか？犯人が突きつけた命題は、ある
意味大変な普遍性のある命題で、彼を牢屋に閉じ込めて済む話ではない。社会的
弱者多数社会の出現で、強者を讃えるばかりの社会に終止符を打たなければなら
ない。