巨大なものの全体なんて理解できない

　ますます理解できない事件が増えてきた。アルジェリアで起きた事件やグアム
で起きた事件を日本の常識で解説なんてできないし、北朝鮮の核実験や中国から
の公害到来もまたしかり。こんなに色々なことがあっては、原発事故の問題が霞
むのも仕方ない。
　私たちはすでに感覚が麻痺していることを自覚した方が良いと思う。そして、
僕は原発が危険で、自動車が危険ではないなんて区別ができるほど器用じゃな
い。せいぜい優先順位をつけることくらいで、本質的には現代文明全てについて
警戒する、と言うやり方しか取れないんじゃないかと思う。そう考えると、原発
はおろか電気そのものを否定して、江戸時代の生活水準に戻る覚悟も、と言うの
は少なくとも思考訓練としてやるべきだ。
　残念なことに、これってかなり難しい。例えば、私たちはミレーの農耕の風
景、農婦の素朴な労働風景を見て、文明に汚されていなかった時代に思いを馳せ
る。しかしこれとて、厳しい農業労働を美化したプロパガンダだったと言われ
る。江戸時代にさかのぼる思考とは言っても、本物の江戸時代は庶民は厳しい年
貢の取り立てに苦しみ、武士であっても繰り返される三勤交代が大きな負担と
なっていた。
　むしろ想像するなら、限りなくミニマムに近い共同体である。あまり政治の力
の及ばないアフリカの大地や南米のジャングルや南の孤島。外部からの侵略、出
入りが極めて少なく、かつ自給自足が可能なコミュニティを想像するくらいだろ
うか。国際化が進んだ現代こそ、同時に超ローカル思考も大事にしてみたい。