タイ・クーデターと安倍自民新総裁

　タイのクーデターは一般的には軍事クーデターとしてもっぱ
らこれからの政情不安について心配する声が多い。もちろん軍
事クーデターと言う側面は問題がある。その一方で、そもそも
タクシン政権に対しては以前から退陣要求デモが盛り上がって
おり、その意味では国民の意思にかなった政変であるという面
もある。
　一方、日本では“出来レース”で安倍晋三氏が自民党の新総
裁に就任した。こちらは逆に、予想通りで波乱もなく、安定し
た政権が築かれるような印象を与える。その一方で、海外プレ
スからはタカ派であるとか、ナショナリストであるとか、外交
面での悪い印象が強調されているようだ。
　つまり、見た目とは反対の印象を私は覚える。タイは一見軍
人の反乱の様でいて、実のところ民衆の意思の帰着点があのク
ーデターのように思える。そもそもタイやフィリピンと言った
東南アジアの国々は民主的に政権をとっても汚職などであっと
いう間に腐敗していくことが多く、それを半ば力ずくで変えて
いく、と言うのは方法論としては非民主的だが、やむをえない
面があるように思う。
　一方日本はと言えば、あれだけ外交面で減点されまくった小
泉首相を更にタカ派にした安倍氏が新総裁、ひいては新首相に
なると言うのは、民衆の意思の反映と言えるのだろうか。もち
ろん、新聞を読めば事前に国民の安倍支持率なんかもはじかれ
ていて、そこそこの支持はあるようだが、個人的には“劇場政
治”が相変わらず尾を引いていて、中身のある話として国民か
ら支持されているようには到底思えない。
　表面的にはタイはまだまだ発展途上国だし、日本は国連でも
常任理事国一歩手前のような先進国である。だが、やや野蛮な
やり方とは言え、政権のリフレッシュを恐れないタイと、戦後
５０年間の長きにわたって自民党が政権政党の座を譲り渡さな
かった日本とで、どちらが民主的に優れているか、と言われた
ら、むしろタイの方じゃないかと思う。まぁ日本の軍人が暴走
した場合、タイのように民衆側の立場で動いてくれるとは思え
ないので（むしろ政権側の意向に立ちそうだ）、日本でクーデ
ターは御免被りたいが（笑）。まぁでも、これをきっかけに野党４党
（民主、社民、共産、国民新党）が結束を固めたというニュース
には救われたが。