ポスト福島のディアスポラ

　福島、宮城、岩手。放射能汚染に限らず、町ごと津波でやられた地域では地元
を離れる人が多い。その一方で生まれ育った土地以外では暮らせない、あるいは
こんなことで地元を復興できないまま逃げることはできない、と地元になんとか
残ろうとする人たちもいる。
　個人的に共感できるのは前者。小さい頃は引っ越しが多かったので、どこが故
郷、という確たる意識はない。だから危険ならばどんどん移動すべき、と考え
る。だが後者の考え方を尊重しないと、そもそも復興が進まないし、そういう故
郷意識を破壊すると日本人の心の拠り所も破壊することになる。
　このことは経済不況にも言えて、どんどん海外進出しよう、という声がある一
方、技術流出を危惧したり、あるいは若い人がどんどん海外へ行って、国内がま
すますお年寄りだらけ、という不安もある。
　私はデンジャー管理という意味では明らかに逃げる方が適切な対処だと思って
いた。しかしそもそも、農業漁業などの第一次産業は昔から自然災害のデン
ジャーから真正面からぶつかってきた人たちではなかったか。むしろ都会でサラ
リーマンやってるリスク管理しか知らない人間より、人間の力ではどうにもなら
ない場面での対処は彼らの方が得意なことも考えられる、もちろん放射能という
目に見えないものに対しては知識のある者が指導すべきなのは当然だが。