世界の右傾化

　NHKクローズアップ現代でイランとイスラエルの緊張状態について報道されて
いた。これを見ると、先日「日本は左傾化なんかしてない、むしろ右傾化して
る」と言う話をしたが、この傾向は全世界的なものだな、と感じる。
　当然ながら世界の歴史は戦争の歴史であって、中東の一触即発状態は古今東西
今昔に存在する。しかし21世紀において特殊なのは、よほど貧しい国でない限り
情報は全ての人々に共有された上でのナショナリズムの蔓延と言うこと。
　テレビラジオがない時代はもちろん国家が戦争状態にあることすら知らない
人々がたくさんいたに違いない。太平洋戦争時代も公共報道はほとんど政府に操
作されていてまともに戦況なんか伝わっていなかった（敗戦濃厚になった昭和20
年前半ですら日本優勢と新聞は報じていた）。今やインターネットで報道にウソ
があれば追及される時代である。
　つまり、国民は戦争によって犠牲者が出る可能性を承知で戦争を支持するので
ある。いやむしろ軍部が暴走ないし政府が国民を騙して戦争する時も同じ覚悟を
誰かがするのだが、実は誰でも“覚悟”するものらしい。
　いや、本当は覚悟なんて表面的かもしれない。政治家が貧しい人の気持ちを理
解できないように、国民は戦争最前線の兵士たちの気持ちを理解できないだけか
もしれない。
　個人的には、国境そのものが無用のものと思っているので、むしろこうした国
際緊張は国家自身が存在意義を鼓舞するために意図的に仕掛けているのだと思
う。なぜイランはイスラム教でまとまれば済むものを、核兵器と言う西側の文明
を使って国内のナショナリズムを鼓舞するのか？イスラム圏は国家ではない、イ
ランと言う国体の維持にはやはりナショナリズムの力が必要だからである（いわ
んやイスラエルは更に核依存症だろう）。突き詰めれば、イスラム教圏、キリス
ト教圏自体が１つの国家になり、ネイションと言う概念をなくせば対立も消える
はずと考える。

　で、なぜ現代国家にナショナリズムが必要かと言えば、宗教単位、民族単位が
国体と一致していないからである。宗教、民族のアイデンティティと国家のアイ
デンティティが一致していれば、宗教的民族的なメッセージを国家がナショナリ
ズムと言うプロパガンダで肩代わりする必要はない。
　ではなぜ日本のような民族と国体が一致“していると思われる”国にもナショ
ナリズムが必要か？答えはもちろん、実際には一致していないから。だから“在
日”が攻撃対象にされる。たとえ日本のような島国でも必ず国内に“異端”は存
在する。社共系が売国奴扱いされるのも、民族や宗教以外にも異端のセンサーが
働く要因（この場合は政治思想）があると言うことでしかない。
　結局、宗教、民族と国体が一致すると言うのは現実的にはありえないのだが、
私は偏狭なナショナリズムを潰したいだけなので、一致させることが目的なので
はない。ナショナリズムが鼓舞される理由を考えることで次に何をすべきかを検
討していきたい。