失恋について(1/2)

　この歳になってまだ恋愛感情が芽生えるのは嬉しいことではあるが、
それにしても相変わらず不器用な自分に対して何と言っていいのやら。
もちろん今更器用になろう、とは思っていない。この歳で自己革命を
起こして、まだ思春期の頃のような青臭さを放つ人間になったところ
で何になると言うのだ？
　まぁそんなことを言ったって、青臭いと言う事実は否定しようがな
い。恋愛って何だろう？相思相愛ってどうすればいいんだろう？あき
らめる引き際の悪さが何と言っても自分の不器用さの最たる点だが、
そもそも一人の女性を簡単にあきらめられるような男は浮気性だ。往
生際が悪い人間だと言われても、それは浮気性でないことの反証なの
だから、と言う信念を貫くほかない。
　ちょっと待て、おれは先ず、恋愛についてあれこれ議論する前に、
友情についても考えなければならない。そもそも、おれには友情から
愛情へ発展するような女友達など１人もいない。もっと言えば、腐れ
縁と言えるような男友達すらいない。理由は簡単、青春時代で友情で
いい思いをした経験がないからだ。友情というのは殆どの場合、おれ
にとって自由を束縛するものでしかなかった。自分と違う趣味に時間
と金を使った。そして大した想い出などできなかった。３０代を過ぎ、
開き直って１人で遊ぶことを覚えてからの方が充実しているような気
持ちになれた（ここで言い訳させてもらうと、オレは自分の世界に閉
じこもる“ひきこもり”をやっているつもりはない、どちらかと言え
ば他の誰にも真似のできない自分だけの世界を広げるために友情を捨
てた、という感じ）。なので、今もなお友情を欲しない。だが果たし
て、友情を抜きにして、いきなり恋愛関係になれる女性がこの世にい
るものだろうか？まぁ慎重さを欠いた女はいるだろう、しかしそんな
女はずばり器量で選んでくるから、おれが眼中に入ってくることは先
ず有り得ない。暗示にかかってヨン様を追っかける類の人種だ。
　恋愛抜きの結婚はありうるだろうか？それはつまり、生活のための
結婚、と言う意味だが、少なくともおれには有り得ない。ワクワク、
ドキドキしない相手と一つ屋根の下に住むなんて、苦痛以外の何者で
もない。ズバリ、オレは家族を否定しているのだと思う。この点に関
しては“爬虫類への憧れ”と言うものがある。親は卵を産みっぱなし
で暖めたりなどの世話を全くせずに見捨てる。生まれた子供たちは親
の顔を見ることなく、自分ひとりの力で生きていく。そのたくましさ
に憧れるのだ。そんなオレに、“家族が強い絆で結ばれる”と言う風
景は、どことなく滑稽に思えるのだ。
　利己主義は徹底的に排除されなければならないのだろうか？自分を
客観視出来ない、と言う問題を差し引いても、おれがそんなに問題が
あるほどわがままな人間とは思えない。いや、もしかすると史上最悪
の利己主義者かもしれない。何しろ「おれが合意した覚えのない法律
を守る必要なんかない」なんてのたまうくらいだから。多分、女の子
に好かれて「ムカツク」感情を持つ人間は他にはあまりいないだろう。
好かれる、と言うことは評価される、と言うこと。それは何と言うか、
偏差値世代のおれにとってはトラウマの一つだ。選ばれたことに対す
る評価されている、と言う事実がおれをむかつかせる。屁理屈みたい
だが、実際にむかつく感情は生理的に事実なのだからしょうがない。
一言で言えば、自分が主導権を握っていないと気に入らないのかもし
れない。だから、どんなに優しくしても最後に相手はこちらの利己主
義を見抜いてしまうのだろう。
　おれは純粋培養の童貞なのだろうか。セックスどころか、デートし
たり、手をつないだりしたこともない（アイドルと握手、ってのは全
く別の話しだろうな）。ひきこもりでもなんでもなく、単に持てない
男が見合いを断り続けたらそんな感じだった。別に後悔はしてなくて、
こんな日々が一生続いたら、それはそれで金メダルに値するようなス
ゴイ人生かもしれない、と考えるくらいの余裕はある。ただ、普通の
人に見えて、自分１人だけ見えない人生の真実と言うものがありそう
で、それが見えないことに対する不安が最近の悩み。
　まぁこんなことで悩んでる人間に、チームを引っ張るリーダーにな
れ、と言われても所詮は無理ですな。おれはいまだに妻をめとること
も、ましてや子供を育てる資格もない屑みたいな人間である。別に屑
人間であることに後悔はしない、ただ、屑人間とまっとうな人間の違
いは一体何なのか、ただただそのことを知りたいのだ。