集英社刊の「京野ことみの本」をミーハー根性で買ってみた。写真集 であると同時に、彼女本人のエッセイも載っているので、そういう意味 で「Candy Mountain」とは差別化されている。
そのエッセイだが、いきなり彼女の小学校時代のいじめられ体験から 始まる、と言うショッキングなものである。いくらいじめが現代の一般 的な教育現場の問題とは言え、テレビでの人気者はきっと学校時代もク ラスの人気者だったに違いない、と想像するのがファンとして当たり前 だし（その反対につぶやきシローが学校で人気者だったと想像する人は 少ないだろうけど（苦笑））、書き方によってはネタにされたいじめっ 子たちが激怒しかねない文章と誤解される可能性がある。死を考えたこ ともある、なんて節は僕のような人間にはドキッとする内容である。だ が実際にはそうした誤解を巧妙に避けると同時に、彼女の汚れのない芯 の強さをうかがわせる内容になっている。
そして彼女のシンデレラ・ストーリー。普通の子が突然芸能人になる と言うことの不思議、それも現実の舞台での。当然のことながら、テレ ビの中の美少女が非常に身近に感じられる文章となっている。
とにかく、すべてがストレートだった。安室チャンも色々本が出てい るが、いずれも他者による著書で、参考にはなるが説得力はない。スト レートであると同時に、とてもリアルだった。普通の子でさえなかなか 言い出せないいじめ話を著書として読む経験は今までなかった。もはや 「今の小中学生は２種類の人種しかいない、すなわちいじめっ子といじ められっ子である、それ以外の種に属することはほぼ不可能である」と 言う今日の暗い現実を表しているせいだろうし、そして、告白によって 現実から目をそらしたりせず、乗り越えようとしている彼女の姿勢がと ても感動的に思えた。女優なのだからすでにこれまでの芝居で人々を感 動させてきたし、またこれからも感動させてくれるのだろうが、このエッ セイに見られる「京野琴美」の物語こそ、どこにも嘘のない素晴らしい 物語だと思った。
＃今回は怒りの内容じゃないですね、すみません。
<97.06.30>