ここにいるのは「普通の女の子」管野美穂だ。アイドルでも、女優でも、タ レントでもない。彼女自身が「女優と自分自身の間にギャップを感じていた。 本当の自分を表現したかった」と言う発言の意味が分かる。
いまやアイドルと言ったって、いろんな自己主張をする時代であって、お人 形さん的な質感だった時代は当の昔に過ぎている。ただ、それはただそれだけ のことであって、アイドルという存在が以前より遠くなったわけでも近くなっ たわけでもない。自己主張をしたからと言って、ブラウン管の中の架空の存在 から少しだけ生身の人間に近づいただけで、そこはやはりＴＶタレントという 職業の人だ。
最近は素人の女の子の写真集が売れているらしいが、そういう時代の潮流が 彼女のこの作品を見て、すごく納得することが出来た。いまどきの隣の女の子 は、何か役柄を演じているように見える。いわゆるコギャルとか、シャネラー とか、今の若い女の子にはありとあらゆる種族名（？）が存在している。これ だけ揃えば、隣の女の子をＴＶタレントと同列に論じてしまうことが出来る。 それは逆に、隣の女の子が空虚な存在に見えてしまう、と言う意味である。 「ときめきメモリアル」のようなギャルゲーが流行るのは、隣の女の子もＴＶ タレントも大差のない時代に、徹底的に架空のキャラクターに対してゲームの 中で自分自身が育てた、という過程を経たことに女の子との距離感の小ささ、 リアリティを感じるのではないかと思う（ちなみに私は殆どゲームはしたこと がない）。
この写真集での管野美穂は、何色にも染まっていない。と言うか、単純なス テレオタイプな表情ではない、ごく日常的な色に染まった表情をしている。い まや「天然ボケ」と言った、素に近いキャラクターもタレントの一つの個性と いう印象を与える時代である。その中で更なる自然さを求めて行き着いたのが、 この写真集なのだと思う。単に衣服を脱ぎ捨てたのではなく、もっとメディア というフィルターを通して我々が知っていた管野美穂像の汚れた部分を削り落 とす、と言うことに成功している写真集だと思った。この写真集を見たら、ヘ アヌードになったという話題だけが先行して、清純派のイメージを壊した、と 思っている人たちの誤解は減ると思うのだが。
<97.08.27>