予想した通りではあったが、写真集からの写真を無断掲載した出版社を菅野 サイドは訴えることにした。もちろんこれは商業的な意味合いでの訴訟であっ て、名誉毀損などのプライバシーに関する裁判とはならないだろう。しかし第 三者から見ればこれはやはり２０歳の女性の乙女心とそれを好奇の眼差しで見 るマスメディアとの戦いである、と思う。
自らの意志でこの写真集の発売にＯＫを出した、と彼女は発言しているが、 会見での硬い表情、そして泣き出してしまったあの会見を見るにつれ、やはり 相当のパーセンテージで周囲の思惑に振り回されているに違いない、と思って しまう。僕は前の記事で、あの写真集はファンと一対一の個人として直接向き 合う姿勢を見せた素晴らしいものだ、と言う意見を表明したし、評論家の中に も、女優として大成するためのよい試練だ、と言う肯定的な見方をする人は少 なくない。そう言う側面が０でないにしても、あのように取り乱してしまった カンノチャンを見ていると、あまりにうら若き乙女が受ける試練としては残酷 すぎるように思えて、強い同情を禁じ得ない。１ファンの自分として、「カン ノチャンがんばれ！」と心の中で応援する他はないのだが、何か単なる芸能界 の１スキャンダルを越えたリアリティを感じている。
それはつまり、芸能人というのはプライバシーをある程度商品化することを やむをえないこととする職業にありながら、彼女が公開したのは本来商品化を するつもりのなかった本当のプライバシーであり、個人的にはそのことに自分 のいやらしさというものを思い知らされ、切ない気分にさせられたことが相乗 効果になっているのだと思う。それはアイドルタレントに対する気持ちという より、限りなく現実の恋人に対して抱くような気持ちに近いのではないか。こ の写真集に対しては、他のヌード写真では好奇心しか感じないのに対し、なぜ か管野チャンに申し訳ないような気分にさせられ、そこで感じる切ない気分が リアルなのである。
<97.08.24>