彼らを北朝鮮に帰せ！

　９月初頭に小泉首相が北朝鮮を訪問して以来、日本の報道機関に北朝鮮
拉致問題の記事が誌面に登場しないことはないご時勢になった。実のとこ
ろ、これらの記事にずっと違和感を覚えている。当初は「拉致はあった」
と言う金正日主席の発言に過剰反応して国交回復の雰囲気を消してしまっ
たこと、日本だって慰安婦として朝鮮人に対するひどい扱いをしておきな
がらあの一方的な記事には全く公平性を書いた独善的な記事としか思えな
かった。言い方は悪いが、拉致されたたかだか数十人の命より、北朝鮮の
飢えと寒さで毎日数百人は死んでいると思われる北朝鮮人の人たちを救う
ことの方がよっぽど建設的だ、と思った。
　現在はどうか、５人の拉致された日本人が一時帰国し、約束では１０日
ほどで北朝鮮に戻るところを、核開発疑惑などを理由にいまだに日本に残っ
ている。おそらく５人の拉致被害者も日本に残りたい、と思っているのか
もしれない。だが彼らの家族はいまだに北朝鮮にいるのだ。彼らの孤独に
ついて日本政府はどう考えているのだろうか。最終的には彼らも日本に帰
らせる、と言う言い方を日本政府はしているが、彼らはそもそも日本人な
のか？個人的に思うに、彼らが帰ってきてしばらくは、拉致事件の被害者
として、“悲劇の主人公”として暖かい処遇を受けるかもしれない。だが
問題はその先なのだ。彼らにとって祖国は北朝鮮なのだ。日本は異国なの
だ。言葉の問題、習慣の違いが彼らにとって重荷になるだろうし、北朝鮮
と日本の教育システムの隔たりの大きさに、彼らがアイデンティティを失
うこともありうるだろう。
　そもそも彼らが日本に来られるのは何時の日なのだ？保証もできないま
ま、拉致被害者だけを日本に引き止めたら、今度は逆拉致状態になってい
るのではあるまいか？はっきり言おう、「被害者家族の会」がやっている
ことは、拉致被害者の残された家族のエゴだと思う。もはや拉致の被害者
本人の生活基盤は北朝鮮なのである。アイデンティティも（中には日本人
と言うしっかりした自覚を持つ人もいると思うが）２４年の歳月を経て、
北朝鮮に比重があるのではないかと推測する。それを無理矢理日本に引き
戻すのはいかがなものか。２度の家族分裂に苦しむ拉致被害者の思いを考
えると、当分国交が回復しそうにない現状では、拉致被害者を家族のもと
に返してあげるのがベストの選択ではなかろうか？国交回復の道具にされ
ている拉致被害者の皆さんが哀れでならない。つまらない国と国の意地の
張り合いに彼らを巻き込まず、どうか彼らを北朝鮮に残してきた家族のも
とに帰してあげて欲しい。