大阪の小学校殺人事件

とんでもない事件が起きた、と言うことで色々なところで話題になっている。
当然誰もが犯人に行き場のない怒りを感じているようだが、オレとしては何と
言うかあのような人間の存在に安堵感を覚えてしまう。

　どういうことかと言うと、異常なことを考えているのはオレ一人じゃない、
と言う安心感を覚えるからだ。もちろんオレは実際に犯行に及ぶことはない
が、彼の考えていることはなんとなく分かる。と言うか、他人に話すと、コイ
ツは危険な人間だ、と思わせるような物の考え方を一杯抱えていて、それを話
したりできない鬱積があり、ああいう事件（必ずしも自分の考えと一致するわ
けではないが）が起るとそうした鬱積の代弁者になってくれたような気がする
からだ。

　そもそも人に話せないような考えを沢山持っているのは、オレが極端な懐疑
主義者だからだ。例えば法律。世の中に最低限のルールが必要なことは理解で
きる。がしかし、そのルールを決めたのは“オレ”ではない、“オレたち”＝
国民の総意、だ。だがオレは直接法律の条文の一語一句を吟味した覚えはなく、
むしろ勝手に“オレたち”にはオレが入っていることにさせられているのが納
得が出来ないわけだ。だから、日々生活する上で困らない程度に法律は守るけ
れども、本質的には法律というのはオレの与かり知らないところで勝手に決め
られたルールなので、積極的に守ろう、と言う気は全くしない。

　数年前は少年犯罪が増えたこともあり、「なぜ人は人を殺してはいけないの
か」と言った類の道徳本も増えているみたいだ（オレは読んだことはないが）。
極端な話、オレは「なぜオレは“人間”にカテゴライズされているんだろう」
と時々思う。性同一障害（肉体は男なのに心は女、あるいはその逆、という病
気）みたいなもので、オレは肉体は人間だが、心は獣だと思う。ヤクザは後天
的に獣気質をヤクザ社会の中で学んでいくが、オレの場合は本能、と言ったら
いいだろうか。

　２０世紀には２つの世界大戦で平気で数百万の人間を殺す連中がいたのだか
ら、被害に遭った小学生にはお悔やみ申し上げるにしても、あのような男の登
場に今更驚くには当たらない。テレビゲームのせいだの、教育の荒廃のせいだ
の、と、何かに原因を求めるのは本質的ではない。１億を超す人間が生きてい
るこの国で、あのような獣の心を持った人間が存在するのは確率論的に当然の
ことでさえある。実際、彼を人間として扱う必要はない、人里に逃げ出した野
生の虎のようなもので、その場で撃ち殺されても文句の言えない存在だ。ただ、
憎しみとかの感情論をされても何の解決にもならないような気がする、何しろ
彼は人間らしさなんてこれっぽっちも持っていない獣なのだから。