話変わって、アレジとゴクミが出演のＴＶゲームのＣＭ。なんだかアレジが ゴクミの尻に敷かれている様子がありありと伝わってくるやり取りがあって、 観ている方は何だか恥ずかしくなってくるのだが、識者によれば、あれがイタ リア男の一般的な姿、独身の時は気障だけど、結婚すると結構愛妻家なのだ、 と言うことを聞き、ああ、あれってイタリア的な幸せな家庭の一風景なのね、 と妙に感心してしまった。
で、何が言いたいのかというと、この２つの話から、今の日本人の神経症状 態を垣間見ずにはいられない、と言うことである。
まあ日本人の神経症ぶりはサッカー以外にもあちこちに見受けられるだろう。 なんで小中学校のいじめ問題がこれほどまでに教育現場の重大な問題になって しまったのか、日本の婚姻率の低さを追う記事を見るにつけ、適齢期の男女の 対人関係の自信の無さを露呈してくれる、そして、結婚してそれなり年月を重 ねた夫婦もまた、家族に対する接し方の違いから大きな摩擦が表面化している。 そのくせ横柄な人間は老若男女を問わず無意識に無神経な連中が多く、贈収賄 をやっても罪の意識が低い政治家や企業経営者がいるかと思えば、ウリをやっ ても何とも思わない女子高生までいる。アレジは表向きＦ１レーサーというカッ コイイ職業に就いているわけだから、尻に敷かれる姿というのはファンから見 るとちょっと残念な気がするものだろうが、考えてみればあのような強い緊張 感を強いられるレースの現場で頑張れるのは、家庭にほんわかとした幸福感が あって、神経をちゃんと休ませる場がある、ということは間違いないだろう。
みんな今の日本がおかしい、と言うことは薄々分かっている。だけどそれは 戦争や飢餓のように目に見えるものではないから、ついつい見過ごしてしまっ ているようだ。逆に言うと、今の日本は戦争や飢餓と言った物理的な困難に直 面している地域を除けば、世界でも指折りの不幸な民族なんだ、と言うことを 最近強く確信するようになったのである。物理的な困難だったら、他の国々か ら援助してもらうことも可能だが、政治腐敗や教育現場の問題を海外の援助で 救う、と言うのは難しい話だろう。
まあ僕個人はこうした問題を解決する力など全くないし、それ以上に解決し よう、と言う意欲よりもこんな風になってしまった日本民族を恥じている、と 言う気持ちの方が強い。経済大国の恩恵を受けながらこんな発言をするのは大 変失礼なことを承知の上で書かせて頂くと、太平洋戦争で屈辱的な敗戦をして おきながら、そこで一生懸命働いてここまで経済大国として復興してきた、と 言うことは、戦勝国に対しての罪の意識を全く持たず、しばらくの間は慎まし い生活で我慢しましょう、と言う反省の美徳が全くなかったせいではないか、 と思う。理由はよく分からないが、私には敗戦後の復興を素直に認められない ものがあるのである。お金の話をするにしても、昔は公共料金の値上げとか言っ た、生活に直接関わるところが語られたのに、いまでは経営者でもないのに金 融ビッグバンとか言うとてつもなくでかい話を心配している。明日の生活に困 るのならともかく、ごく普通の人が日本の経済全体を憂う、というのはなんか 変だし、それ以上にとても傲慢に思える。アメリカが軍備を増強して自分たち が世界の警察だ、と名乗っているあつかましさと同様に、日本人が自分たちが 世界の金融の中心地だ、と言わんばかりの図々しさを感じる。つまり、本音と しては、海外に逃亡して、そこでは誰からも日本人だと気づかれないように生 活したい、ってことなのである。とりあえず僕は１０年後、２０年後の自分が どうしているか、なんてことにはさっぱり関心がない、きっと明日大地震が起 きて、部屋中に積み上げられたレコード、ＣＤ、雑誌の山に押しつぶされて窒 息死するんだろう、と思っているから（雑誌はともかく、レコードとＣＤは今 のところ捨てる気も売り払う気もない）。それなら思い切って海外逃亡、って のもいいかもしれないな、と、ちょっと妄想中である。
<97.10.22>