ＡＥＲＡと言うと、朝日新聞社の発行する比較的硬めの（人によっては柔らか 目と思っているだろうが、まぁそれは人それぞれってことで）ニュース週刊誌で あることは皆さんご存知の通り。で、「硬め」ではあるが（＝一見すると中高年 層をターゲットにしているように見えるが）、最近どうやら３０代をターゲット にしている、と言うことが分かってきた。つまり、ＳＰＡ！をちょっと硬めにし たようなイメージである。それはまぁいい。問題は記事の書き方である。
今の３０代を評論する記事はどこでも「結婚できない世代」とか、「人間関係 が希薄な世代」と言うレッテルを貼られていて、それを書くことも別にジャーナ リズムとしておかしいとは思わないが、書くんだったらそれなりにこんな風に社 会を変えればよいのではないか、と言う建設的な意見を提案する気はないのか？ とか言いたくなってしまう。事実を忠実に伝えているだけ、と言っても、紹介さ れている人物は当然ながら記者が意図的にそうした社会現象を端的に示す人を選 んでいるわけで、考え様によってはそういうサンプルにされた人を物笑いにして いるだけの悪質な個人攻撃のようにも思える。
「悪質な個人攻撃」と言うひどくネガティブな受け止め方をしてしまうのは、 こうしたジェネレーションギャップの問題を人生の先輩たる記者の皆さんが建 設的な意見を提出することもなく事実だけを挙げ連ねているからである。それ も面白おかしくではなく深刻な書き方をするから余計に厄介で、笑って読めな いのである、当の３０代の我々が。金を払って身につまされる思いにさせられ てしまうのである、そういう雑誌を買ってしまう自分も自分だが。
もちろん、当の記者の皆さんは３０代という世代が押し付けがましい論調であ れこれ言われることに強い抵抗を感じる世代であるからこそ、こういう意見を述 べない曖昧模糊とした記事を書いているのだろうけど、結果として読者に対して 無責任な記事になっていないか？こうした一連の記事で、この世代の婚姻率が上 がるのか、むしろ下げる方向に煽りかねない記事ばかりである。僕が思うに、こ れらの記事は我々の世代の自閉性を助長する好ましからざる記事である。
以前にも書いたが、僕は福田和也氏の著書を何冊か愛読している、彼の論旨が 今日の社会において著しく偏っていることは僕にも多少なりとも分かるが、それ でも氏の著書を読むことに意味がある、と考えるのは、氏本人が悪人呼ばわりさ れることを覚悟の上でものを言う、と言う、物書きで飯を食う人間の基本に徹底 的に忠実だからである。日本が戦争になったら娘をお国のために差し出す、なん て発言には、どう見ても狂っているとしか思えないが、人様からお金を頂戴する ために出版した著書の中で発言しているのだから、多分本気なのだろう。と、福 田氏個人を絶賛したくてこの記事を書いているわけじゃない、そうではなくＡＥ ＲＡの曖昧模糊とした記事ばかり書き、ジャーナリストとして発言の責任から逃 れてばかりいる記者たちを断罪するためにこの記事を書いているのである。
おそらくＡＥＲＡと言う雑誌は神戸連続殺人犯の少年の写真を載せたフォーカ スのような事件は起こさず、優等生的な立ち回りで今後も編集を続けていくのだ ろう。そして、我々３０代と同じひ弱な論調で識者の意見をさもありなんと載せ 続け、編集している記者自らは言葉を発することはないのだろう。これじゃあま るで、外交には弱腰で国民に対しては裏切り行為を繰り返す悪徳政治家と大差な いのではないか。まさに、こんな体堕落なマスコミのあり方自身が日本をダメに しているのだと思う。ちょうどこの記事を書いている最新号で鈴木邦夫氏が「右 翼はもっと一般の人にわかりやすい言葉で主張せよ」と言う主旨のコラムを書い ていたが、あなたたちこそこんな論点がもやもやして読み手を不安にさせるよう な記事はいい加減にやめていただきたい、と思う。
<97.09.25>